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相談するはじめに 〜AI導入の理想と現実のあるあるは?〜
カスタマーサポートにAIを導入しようという話になると、多くの企業で「AIにメールを書かせよう」「電話対応をAIに任せよう」「マニュアルを読み込ませたAIが全て回答してくれる」といった理想論が吹き荒れがちです。
残念ながら単純なAI導入で解決できる課題は全体の10%程度に過ぎません。むしろ現場の実情を無視した導入は逆効果になる可能性すらあります。ROIが見合わず、「何のために導入したのか」という結果に終わるケースが後を絶ちません。
本記事では、複数のB2C企業でのカスタマーサポート改革の実績を基により現実的で効果的なアプローチをご紹介していきます。
1. 成否の鍵はまず「観察と計測」から始めること
現場との信頼関係構築が第一歩
カスタマーサポートの改革を進める上で最も重要なのは、CSチームのリーダーやサブリーダーとの信頼関係を構築することです。彼らは現場の業務を完全に理解しており、実運用の課題を最もよく知っている存在だからです。
一方で、長年のオペレーションに慣れきっているがゆえのバイアスも存在します。「薄々改善の余地があると感じているが、現状がベターだと思い込んでいる」といった自己認識の罠に陥りがちです。だからこそ、外部の視点を入れることに意味があります。
業務の可視化:主観的でも構わない
まず行うべきは、CSチームが何に時間を使っているかの徹底的な可視化です。これは厳密にストップウォッチで計測したり、モニタリングツールを導入したりする必要はさすがにありません。
- 現場メンバーへの丁寧なヒアリング
- 1週間程度の業務時間の記録
- 各業務にどれだけの時間が使われているかの洗い出し
このプロセスで見えてくることは驚くほど多いのです。
「メール返信」に隠された複雑な業務フロー
例えば、「お客様からの問い合わせにメールで対応する」という一見単純な業務も、実際には以下のようなプロセスで構成されています。複雑です。
- 各店舗別の問い合わせフォームの確認
- 新規受付の内容確認
- ユーザーの管理画面での状況確認
- 解約可否やキャンペーン適用状況の確認
- 過去の履歴やマニュアルからの参照
- 返信文の作成(コピペと微調整)
- 担当者の割り振り
そして、当初想定していた「文章作成」よりも「各種システムへのアクセスと情報収集」に2倍以上時間がかかっていた、というインサイトも往々にして湧いてきます。このような場合現場にChatGPT導入した!あとよろしく!ピンボケの施策となって業務効率化にはほとんど寄与しません。
2. 勇気を持ってそもそも論で業務を見直す
本当に必要な業務かを問い直す
上記の計測と並行して重要なのが、「この業務は本当に必要なのか」という根本的な問いかけです。
例えば、サブスクリプションサービスの解約に電話対応を必須としている企業があります。しかし以下の観点から見直す必要があります。
- 解約希望者への電話引き止めは、現場スタッフの精神的負担が大きい
- 電話による引き止め効果は本当に測定・比較されているか
- ユーザー体験として適切か
多くの場合、「事業者側からのオーダーだから」という理由で続けられている業務は、その効果を誰も検証していないケースにとどまっていることが多くあります。全てを厳密に効果測定して、合理的な理由でオペレーションに落とし込む余裕はないからです。
横断的なヒアリングと調整の重要性
CSチームは日々の運用に追われ業務の抜本的な見直しに踏み込む権限がないことがほとんどです。そのため以下のような横断的なアプローチが必要です
- 効率化や廃止によって誰が困るのかの特定
- その人たちが本当にその業務を必要としているかの確認
- 代替手段の検討と提案
これは粘り強い調整必須で難しい作業です。ただその分大きな成果につながる可能性があります。
3. 中長期的な視点:コンテキストエンジニアリング
AIの将来的な活用を見据えたデータ整備
10年後には、AIがカスタマーサポート業務の大部分を担っているでしょう。そのために今から準備が必要です。
例えば、現在多くの企業で以下のような状況が見られます。
- CSマニュアルのメンテが追いつかず、陳腐化している
- CSマニュアルは整備されているが、AIに渡しても適切な回答が生成されない
- 過去の対応履歴から人間がコピペする方が、AIに一から作らせるより効率的
- マニュアルから、どの情報をどのような濃淡で参照すべきか、AIが判断できない
データ資産の構築
メールや電話での対応履歴は、将来の業務効率化のための資産です。宝の山です。石油です!これらを適切に蓄積・活用するために以下を意識するのがおすすめです。
必要な取り組み
- 問い合わせと回答を1対1で対応させたデータベース構築
- 電話内容の録音と、AI/人間が識別可能な形での要約
- 参照しやすく、抽出しやすい形でのデータ格納
避けるべき取り組み
- 議事録をGoogleドキュメントに記載してGoogleドライブに保存するだけ
- 構造化されていない形でのデータ保管
- 人間の手作業に依存した情報整理
3つの重要アクションをまとめると
カスタマーサポートの真の改革を実現するために、以下の3つのアクションが必要です:
1. 徹底的な観察と計測
- 何に何時間使っているかの把握
- 時間がかかっている業務の要因分析と言語化
2. そもそも論での業務見直し
- 他の方法で代替できないかの検討
- 業務の必要性そのものへの問い直し
3. コンテキストエンジニアリング
- 将来のAI活用を見据えたデータ整備
- 省エネで実現できる自動化体制の構築
これらのアプローチは泥臭く時間もかかる一方で、表面的なAI導入では決して得られない本質的な業務改革につながります。
カスタマーサポート改革を共に実現するパートナーとして
本記事でご紹介したような「観察と計測」「業務の根本的見直し」「将来を見据えたデータ整備」は、理想論ではなく実際の現場で成果を出すために不可欠なアプローチです。しかし、日々の業務に追われる中で、これらを自社だけで推進するのは容易ではありません。
株式会社Kumonoは、複数のB2C企業でカスタマーサポート改革を支援してきた実績があります。
私たちの強みは、単なる提案で終わらず、現場に入り込んで実装まで責任を持つことです。
- CSチームとの信頼関係を構築し、現場の実情を深く理解
- データ分析とAI活用の専門性を活かした、実効性のある改善策の立案
- 経営層と現場を繋ぐ「翻訳力」で、組織横断的な改革を推進
「AIを導入したいが、何から始めればよいか分からない」 「現場の負担を減らしながら、顧客体験も向上させたい」 「将来のAI活用を見据えた、持続可能な仕組みを作りたい」
このようなお悩みをお持ちの方はぜひ一度お話をお聞かせください。 貴社の現状と課題を丁寧にお伺いし、最適なアプローチをご提案いたします。
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