目次
相談するこんな方におすすめ
- AI導入を検討しているが、どの業務から始めればいいか分からない
- 他の自治体の成功事例を参考にしたい
- 予算や人員が限られる中で、効果の出やすい領域を知りたい
この記事を読むとこう変わります
Before:AIに関心はあるが、「どこに効くか・何から着手すべきか」が分からず、検討だけが続いている
After:効果が実証された領域と具体的な進め方が分かり、最初の一歩を踏み出せる状態になる
自治体AI導入の現状
総務省の調査(2024年末時点)によると、生成AIを導入済みの自治体は都道府県・政令市で9割以上。一方、その他の市区町村では約3割にとどまっています。
ただし「実証中」「導入予定」を含めると5割を超えており、検討は着実に進んでいる状況です。2024年12月には総務省から「自治体におけるAI活用・導入ガイドブック」の第4版も公表され、導入のハードルは確実に下がってきています。
では、すでに導入を進めている自治体はどんな領域でAIを活用しているのか。成功事例を見ていくと、効果が出やすい領域には明確なパターンがあります。
効果が出やすい3つの領域
1. 議事録・答弁書作成
最も導入効果が出やすいのが、文書作成業務です。議会答弁の下書き、会議の議事録作成など、「過去の資料を参照しながら文章を書く」業務はAIとの相性が良く、作業時間40〜50%削減という成果が複数の自治体で報告されています。
2. 住民向けチャットボット
24時間対応できる住民向けチャットボットも、効果が実証されている領域です。ごみの出し方、手続きの案内、子育て相談など、よくある問い合わせをAIが自動回答することで、職員の負担軽減と住民サービス向上を両立できます。正答率90%超を達成している自治体もあります。
問い合わせ対応へのAI活用については、カスタマーサポートのAI活用と業務改革でも詳しく解説しています。
3. 庁内ナレッジ検索
庁内に蓄積された膨大な文書やマニュアルをAIで横断検索できるようにする取り組みも増えています。「あの資料どこだっけ」「この手続きの根拠は」といった調べ物の時間を削減し、属人化の解消にもつながります。
ナレッジの整備・運用については、KibelaとGoogle Docsを併用したナレッジ運用も参考になるかもしれません。
自治体AI活用事例10選
ここからは、実際に成果を上げている自治体の事例を紹介します。文書作成系、チャットボット系、ナレッジ・セキュリティ系の3カテゴリに分けて見ていきましょう。
文書作成・業務効率化系
1. 相模原市:議会答弁の作成時間を40%削減
市長答弁の下書きを職員がゼロから起案する従来業務に、多くの時間がかかっていました。そこでNECと協同し、過去5年分の答弁データを学習させた国産生成AIを試行導入。
結果、答弁案の作成時間が約40%削減。職員アンケートでは「AIが生成したアウトラインを活用できた」というケースが45%にのぼりました。
ポイント:過去データの蓄積がある業務は、AI活用の効果が出やすい典型例です。
2. 取手市:議事録作成を50%効率化
議会対応業務の効率化を目指し、2024年9月から生成AIと音声認識を組み合わせたシステムを導入。職員が一般質問の内容を入力すると、AIが想定問答と答弁素案を複数生成します。
約半数の職員が「作業時間が50%程度削減された」と回答。AI生成案をたたき台にしつつ、職員の知見を加えて仕上げる運用が定着しています。
ポイント:AIに100%任せるのではなく、「下書き生成→人間が仕上げ」の分担がうまくいっています。
3. 北海道:ChatGPT・Copilotを全職員に開放
働き方改革の一環として残業15%削減を目標に掲げ、2024年6月から職員がChatGPTとMicrosoft Copilotを業務端末から利用できるようにしました。
事前にガイドラインを整備し、研修も実施。庁内アンケートでは「業務効率化に役立つ」との回答が多数を占め、文書作成やアイデア出しでの有効性が確認されています。
ポイント:全庁展開の前に、ルール整備と研修をセットで行っているのが成功の鍵です。
参照:北海道公式発表
4. 大阪市:全庁AIアシスタント「OASIS」
部署や職員によってばらつきのあった文書作成・回答品質を均一化するため、全庁で使える生成AIアシスタント「OASIS」を導入しました。
専門知識の共有や属人業務の解消につながり、住民への説明文面の品質も向上。AI提案による新たな施策アイデア創出など、副次効果も生まれています。
ポイント:「品質の平準化」という切り口は、AI導入の稟議を通しやすいテーマかもしれません。
参照:大阪市公式発表(PDF)
5. 尾張旭市:研修強化で利用率1.89倍に
2023年にChatGPTの庁内試行を開始しましたが、1回目は利用率が伸び悩みました。そこで説明会や研修を強化し、同年12月に2回目の試行を実施。
「業務効率が上がる」と回答した職員が80%→95.2%に向上。利用回数も1日あたり約1.89倍に増加しました。
ポイント:ツールを入れるだけでは使われない。「どう使えばいいか」を伝える研修がセットで必要です。
チャットボット系
6. 別府市:子育て相談で正答率93.3%
子育て支援策の一環として、24時間対応可能なAIチャットボットを導入。市独自のQ&Aデータと生成AIを組み合わせ、2024年3〜4月に実証運用を行いました。
質問139件中93.3%が正しく回答。完全に誤った回答はゼロでした。「いつでも相談できる」「回答が迅速で的確」と利用者からの評価も高く、2025年7月から本格運用を開始しています。
ポイント:独自のQ&Aデータを整備したことで、高い正答率を実現しています。
参照:別府市公式発表(PDF)
7. 佐賀市:市民のフィードバックで賢くなるAI
2023年8月から、AIが自動回答する総合案内サービス「しつぎ☆おとうふ君」を運用。ごみの出し方や手続き案内など、24時間365日対応しています。
特徴は、市民からの質問データを学習して徐々に精度が上がっていく仕組み。AIと住民が協働してサービスを改善していく運用になっています。
ポイント:「導入して終わり」ではなく、継続的に学習・改善する設計が重要です。
参照:佐賀市公式発表
8. 渋谷区:111言語対応で外国人住民をサポート
LINE公式アカウント上で、最大111言語に対応したAIチャットボットを運用。外国人住民や訪日客からの問い合わせに24時間自動応答しています。
「母語で行政情報を得られて助かる」と好評で、言語の壁を越えた住民サービスを実現しています。
ポイント:多言語対応はAIが得意とする領域。外国人住民が多い自治体では特に効果が出やすいです。
ナレッジ・セキュリティ系
9. 西宮市:庁内文書をAIで横断検索
組織内に蓄積された膨大な文書データを参照して回答する庁内専用AIを、2024年2〜3月に試行導入。職員91名で検証を行いました。
59%の質問で「正しい回答が返ってきた」と評価され、約98%の職員が「業務効率化につながる」と回答。「あの資料どこだっけ」という調べ物時間の削減に効果が見込まれています。
ポイント:既存の文書資産を活かせるので、新たにデータを整備する負担が比較的小さいです。
参照:西宮市公式発表(PDF)
10. 生駒市:セキュアな環境でAI活用
個人情報を扱う業務でも安心してAIを使えるよう、自治体専用ネットワーク(LGWAN)上で利用できるChatGPTの実証実験を2023年8月から開始。
外部ネットに接続しない閉域環境でAIを活用できるため、セキュリティを確保しながら業務効率化を進められます。他自治体のモデルケースとしても注目されています。
ポイント:セキュリティが懸念で導入が進まない場合、閉域環境での実証から始めるアプローチが有効です。
参照:生駒市公式発表
導入を成功させる3つのコツ
事例を見てきましたが、成功している自治体にはいくつかの共通点があります。
1. 小さく始めて効果を検証する
相模原市や尾張旭市のように、まず一部門・一業務で試行し、効果を検証してから拡大するアプローチが有効です。いきなり全庁導入を目指すと、調整に時間がかかり、かえって進まなくなります。
「議事録作成」「よくある問い合わせ対応」など、効果が見えやすい業務から始めるのがおすすめです。
2. ルール整備を先にやる
北海道や生駒市の事例に共通するのは、AI利用のガイドラインを事前に整備していること。機密情報の取り扱い、誤回答があった場合の対処、利用できる業務の範囲など、ルールを明確にしておくことで、職員が安心して使える環境をつくれます。
総務省が公開している「生成AIシステム利用ガイドライン(ひな形)」を参考にするのも一つの方法です。
3. 職員を巻き込む(研修・説明会)
尾張旭市の事例が示すように、ツールを入れただけでは使われません。「どんな業務に使えるか」「どう入力すればいいか」を伝える研修や説明会が必要です。
実際に使った職員の声を共有する場をつくると、「自分の業務でも使えそう」という気づきが広がりやすくなります。
そもそもAIを導入する前に、業務フローやナレッジが整理されていないと効果は出にくいものです。「AIの前に土台をつくる」という考え方については、Kumonoの業務整理・ナレッジ整備支援でも詳しく紹介しています。
まとめ
自治体のAI活用で効果が出やすいのは、以下の3領域です。
- 議事録・答弁書など文書作成(40〜50%の時間削減)
- 住民向けチャットボット(24時間対応・正答率90%超)
- 庁内ナレッジの横断検索(属人化解消)
導入を成功させるポイントは、「小さく始める」「ルールを先に整備する」「職員を巻き込む」の3つ。
AIは魔法の杖ではありませんが、適切な領域で、適切に導入すれば、職員の負担軽減と住民サービス向上を両立できます。まずは効果が見えやすい業務から、小さく始めてみてはいかがでしょうか。
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