意思決定デザイン

ちゃぶ台返しが多い会社ほどイエスマンしか残らなくなる理由&抜け出し方

ちゃぶ台返しが多い会社ほどイエスマンしか残らなくなる理由&抜け出し方

「社内会議だと、どうしても硬直するし新鮮でフラットな意見は出てこない」「意見はおろか、メンバーなかなか主体性を持ってくれない...」というセリフは、日頃営業活動や、クライアントワークでご相談をいただく中で無限に耳にすることばです。

例えば、経営者やチームメンバー側の悩みとして以下のようなセリフがありました。

「重要な意思決定だから社員も交えてけんけんがくがく議論したかったけど、結局全部自分で決めてしまった」

経営者としてはより意思決定の質を上げ、社内を巻き込んだ合意形成でより強固な施策実行を意図して善意で動いています。ただ気になったのは、くわしく話を聞いていくと、過去3か月で「大きな方向転換」が少なくとも7回発生していました。

そこで飲み会に出向いた際に、現場メンバーの本音を探ると予想以上に疲弊した言葉が返ってきたことがあります。

「どうせ直前に変わるので、本気で考えるのもなかなかしんどいし、無駄まであるんじゃないかという気になるんですよね」

ここら辺の構図はよく目にするので、多くの組織で起きうる事象だと考えています。

つまり、

経営・チームリーダー側は

  • 「社員にはもっと主体的に動いてほしい」
  • 「ちゃんと巻き込んで、一緒に決めたい」

と巻き込みの姿勢を示す一方で現場側は

  • 「どうせ最後はひっくり返る」
  • 「言っても意味がない」

と諦めムードな学習をしています。

結果として組織には徐々に「イエスマン」が増えていきます。

今回の記事では、組織の中で誰か特定の人物に属人化したイエスマン構造ではなく、

  • なぜちゃぶ台返しが起きやすくなるのか
  • なぜイエスマンが増えてしまうのか
  • そこから抜け出すために、組織としてどんな対策を入れるべきか

について、日頃Kumonoがみている現場や支援の中で抽出した知見をもとに解説してみました。

これは経営者と社員の関係だけではなく、マネージャーとチームメンバーの関係でも同じ構造で起こることなので、こちらの記事がチーム運営に悩む方に広くお役に立てれば幸いです。

1. なぜちゃぶ台返しは現場を冷めさせるのか

ちゃぶ台返しについて、思いつきやすい例としては、

  • リリース直前に「すみません〇〇XXな理由でどうしてもやっぱりナシで」と覆った
  • 長時間の発散系の会議をしたが、結果現場から上がってきていい感じに検討されていたアイデアが土壇場でナシになった

    みたいなTHEちゃぶ台返しですね。

こういうのは流石に倫理的な観点で乱発は避けたいが、どうしても仕方ない時は全然ある、という考え方の人は多いのではないでしょうか?
新しい情報や思考、意思が出て前提が変わるのは、どんな事業でも起こり得ることです。

ただ現場に残る印象や手触りは、もう少し違うニュアンスです。

  • 時間をかけて準備したことが突然「なかったこと」になる
  • 自分なりに工夫した部分や判断が、評価されないままリセットされる
  • なぜ変わったのかの背景が共有されないまま、決定だけが降ってくる

これが何度か続くと現場はこう学習します。

「本気で考えても結局最後は社長がひっくり返る」
「だったら、ほどほどで省エネしておかないと身がもたないな..」

つまり、ちゃぶ台返しの頻度そのものが
「社員がどれくらい本気で頭を使うか」のリミッターになりうるという話になります。

2. ちゃぶ台返しが生まれやすい組織のパターン

どんな特徴があるか、順に見ていきましょう。

2−1 決裁の重みが軽く扱われている

会議やチャットでフットワーク軽く「いいですね!GOしましょう」と決まる。
スピード感という意味ではプラスですが、

  • 誰が施策のオーナーなのか
  • どの時点で「確定」とみなすのか
  • 何をもって「完了」とするのか

といった前提が曖昧なまま走り始めると、後からのひっくり返しが起きやすくなります。

現場からすると

「決まったと思って走り出したのに、実はそうでもなかった」

という感覚になり、決裁を信じにくくなっていきます。

2−2 「やめ方」が最初から設計されていない

新しい施策を始める時には目的や狙いを明確に持つ一方で、

逆パターン、「やめ方」まで決めているケースは、まだそれほど多くないと思います。

  • どんな状態になったら見直すのか
  • どんな条件なら撤回を検討するのか

という

やめ方が決まっていないと、撤回のタイミングは場当たり的になりがちです。
経営側の頭の中で「何か違う」と感じた瞬間が、そのまま撤回のトリガーになってしまうし、そのトリガー自体は経営者個人にとっては熟慮の末筋が通っていても、それが組織に伝わってないということは起こり得ます。

結果として、現場には「ガラガラポンが起こった」という事実とわちゃわちゃした印象が残ってしまいます。

2−3 フィードバックが一方向になっている

経営から現場へのフィードバックは頻繁に飛びますが、
現場から経営へのフィードバックは構造化されていないことが多いです。

  • 「この決め方だと、オペレーションが持ちません」
  • 「このタイミングの変更は、顧客体験にこういう影響が出ます」

こうした声を、正式なフィードバックとして吸い上げる仕組みがないと
経営は「特に問題なく回っている」と認識し続けます。

その結果、意図とは関係なく「ちゃぶ台返しが当たり前の組織」が出来上がっていきます。

2−4 主体性の範囲が曖昧なままになっている

「社員が主体性を持ってくれない」「なかなか硬直して新鮮でフラットな意見が出にくい」というセリフは、日頃クライアントワークや営業活動の中で無限に耳にします。

念の為揃えておきたい前提として、

「全員が、すべてのテーマで、同じ強度の主体性を発揮する必要まではない」

という暗黙の前提です。

本来は

  • 経営として握るべきテーマ
  • 担当オーナーに裁量を委ねるべきテーマ
  • チーム全体で議論したいテーマ

を切り分けておく必要があります。

この整理がないと

  • 経営が握りたい領域に無責任な口出しだけが増える(逆もまた然り)
  • 担当オーナーが決めるべき領域なのに最後は全部上に戻ってくる
  • 「これは誰が最終的に決めるのか」が分からないまま会議が進む

といった状態になって

  • 反対意見だけ出して、責任は取らない人
  • 任されたはずなのに、決め切れず戻してしまう人

が増えるという厳しい状況が沸き起こっていきます。

「主体性の範囲の曖昧さ」はよくよく考えると、ちゃぶ台返しとイエスマン化を加速させる要因のひとつです。

3. ちゃぶ台返しがイエスマンを増やすメカニズム

ここでいう「イエスマン」とは、
意見を持っていない人というよりも

「意見を出しても意味がない」と学習した結果、
もはや表にあえて出さなくなっていった人

を指します。

経営としては「社員に主体性を求めているつもり」でも、
現場側の学習は皮肉なことに逆方向に進んでいくことが起こりえます。

3−1 主体性を出すインセンティブが薄れていく

主体的に動くということは、裏側で次のようなリスクを引き受ける行為です。

  • 自分なりの仮説を立てて提案する(めっちゃカロリーを使って)
  • 反対意見や代案を出す(脂汗をかきながら意を決して)
  • その結果として外したり否定されるかもしれない(ダサい感じに終わる)

この心理的コストを払って挑戦したときに、何度もちゃぶ台返しを経験するのは通常、流石にキツいです。

  • 本気でやっても報われない
  • 自分の判断はすぐ上書きされる
  • 最後は上の結論に合わせることになる

という学習が進みます。

そうなると

「主体性を出す」より「波風立てずに従う」方が省エネかつ尊厳も守られて合理的

になります。

3−2 組織には「イエスと言う人」だけが残る

その結果として起こるのが、次のような状態です。

  • 自分の意見を持たない人
  • 持っていても場では出さない人
  • とりあえずその場で同意しておく人

こういうメンバーだけが残っていくと、会議でどれだけ

「今日は遠慮なく意見をください」

と言っても、本音では

「どうせ最後は変わる」
「ここで言ってもあまり意味がない」

と感じている人が増えていきます。

経営視点から見ると

  • 「レベルの高い意見が出てこない」
  • 「やっぱり自分が決めるしかない」

と感じやすくなり、さらに決定を引き取ることになりイエスマン化が加速する負のループがぐるぐるとまわっていきます。

4. ちゃぶ台返しする時におさえたいこと

ここまで読むと

「ちゃぶ台返しや方向転換はしてはいけないのか?そんなの現実的に無理では?」

と感じるかもしれませんが、もちろんそんなことはありません。

  • 事業環境が変わる
  • 法規制が変わる
  • 想定と違うデータが出てくる

こうしたときに決定を修正したり撤回したりするのは、経営やチームリーダーの重要な役割です。

問題は「変えるかどうか」ではなく「どう変えるか」です。
最低限、次の三つがあると、ちゃぶ台返しが事故ではなく学習として受け取られやすくなると考えます。

  1. なぜ方向転換が必要になったのか、できるだけ具体的に言葉にする
    どんな前提が変わったのか、どんなリスクやコストを避けたいのか。
  2. ここまでの取り組みが組織にとってどんな意味を持っていたのかを誠実に伝える
    何が分かったのか、どの知見が次の施策に引き継がれるのか。
  3. 同じパターンを減らすために意思決定プロセスのどこを少し変えるかを共有する
    例えば「リリース一週間前以降の大きな仕様変更は原則しない」といったシンプルなルールでも十分です。

これだけでも、現場の受け止め方はかなり変わります。
「やっぱナシ」ではなく「状況を見て軌道修正した」と感じられるようになります。

5. 「で、どうすればいい?」

御託並べてないで、「で、どうすればいいかかきなさい」というお声に応えていきます。
まず前提として、メンバー側にも明確な作法が必要です。

以下の記事でも触れた、'Disagree and Commit'という概念を紹介しますが、特にスタートアップでは、これは組織に必須で入れるべきOSに近いものだと思います。

5−1 議論の場では徹底的に決まった後は前を向く

健全な組織では

  • 議論の場では、遠慮なく反論してよい
  • 経営やリーダーの案に対しても、率直に違和感をぶつけてよい

という文化が必要です。

一方で

  • 議論をやり切り、組織として一度「これでいく」と決めた後に
  • 影でぐちぐちと不満を言い続ける
  • 施策がうまくいかなかったタイミングで「自分は前から違うと思っていました」と言う

これらの行為をNGとする。これらは組織の信頼を強く損ねる行為です。

これは「本音を言うこと」とは別物で

「リスクを取らずに、後出しで正しさだけ取りにいく」

ムーブを取り締まって、組織として行動する際のブレない強さを取りに行くという意図があります。

この点については、経営側が「これはやってはいけない」と明確に言語化し、全社員に共有しておく必要があります。
たとえ、多くの経営者やマネージャーにとっては当たり前の感覚・作法であっても、明文化されていないために共有されていないなら、それは組織OSになっていないということに等しいと思います。

結果、「メンバー後から飲み会で愚痴言ってる」みたいなことが往々にして起こりえます。

5−2 「言うなら今」の前提を、全員の共通認識にする

だからこそ

  • 反対があるなら、今言ってほしい
  • 「あとで失敗したときに言う」のではなく、「決める前にぶつけてほしい」

という前提を、何度も繰り返し伝えることが大事になります。

これがないと、メンバーは

「本音を言うと嫌われるかもしれないので、とりあえず黙っておく」

という学習をしてしまい、議論の場の密度が上がりません。

6. それでも「後から気づく違和感」は必ず出てくる

ここで誤解してほしくないのは、

「議論の場で言わなかったなら、後から何も言うな」

という意味ではない、ということです。

「決まった後に限られたメンバー間で飲み会でぐちぐち言うこと」と
「決まった後に新しい論点を正規ルートで提起すること」は、まったく別物です。

人には

  • その場で口達者で、その場で(同期的に)言語化するのが得意なタイプ
  • 一度持ち帰ってから考え、非同期で深掘りするのが得意なタイプ

がいます。

会議の場ではうまく言えなかったけれど、その後に

「やっぱりこういうリスクがあるのではないか」
「説明を聞いているうちに、別の懸念が見えてきた」

と気づくことは、誰にでもあります。

大事なのは

  • 影で不満として流すのではなく
  • 正規のチャンネルとして、追加の懸念やアイデアを出せる場を用意しておくこと

です。

例えば

  • 会議後に非同期でコメントを追加できるスレッドを用意する
  • 一度決めた後でも、「この枠組みの中であれば、追加の論点歓迎」と明示する

など、時間軸を少し長く取るだけで、拾える声は増えます。

「議論はその場だけ」「後から言うな」と強く締め過ぎると
言語化が得意な少数の人だけが発言し、その他のメンバーの違和感が表に出なくなります。 

7. 方向転換や「ノー」を伝えるときに、未来のイエスマンを増やさないために

最後にどうしてもちゃぶ台返しや「ノー」を突きつけざるを得ない時、それ自体を避けられない場合に、最終どう伝えるかの話です。

方向転換や中止の判断は、どうしても発生します。
そのときの伝え方しだいで、次のことが大きく変わります。

  • 「挑戦した人が、もう二度と手を挙げたくなくなるか」
  • 「挑戦した人が、『やってよかった』と思えるか」

組織の主体性を失わないためのノーの伝え方について工夫できることを記載します。

7−1 軸をはっきりさせて伝える

例えば、こんな軸があります。

  • 今ではない(タイミングの問題)
  • このやり方ではない(手段の問題)
  • このチームで管掌すべきではない(オーナーの問題)
  • 今のビジョンやブランドとはずれている(方向性の問題)

「なんとなく違う」「しっくりこない」で終わらせず

  • どの軸で「違う」と感じているのか
  • どのリスクを重く見ているのか

をできる範囲で言葉にして共有する。

論理ではない局面ももちろんあると思います。どうしても直感に寄っている場合も正直に

「正直ロジックを超えて、ここは自分の主観や直感もかなり入っている。けど、その判断の責任は自分が負う」

と伝えた方が現場の納得感は高くなります。

悪い伝え方の例

「この案、ちょっと違うかな。もう一回考え直して」

理由も軸も分からないので、
提案した側は「何がダメだったのか」「次にどう生かせばいいのか」が見えません。

良い伝え方の例

「提案ありがとうございます。このアイデアのおかげで、〇〇という論点がだいぶクリアになりました。
ただ今回は『タイミング』の軸で見送りたいです。理由は、今期は△△を優先していて、ここにリソースを割くと全体のスケジュールが崩れるからです。
一方で、□□の部分は次の施策でも必ず生きるポイントなので、そこは一緒に形にしていきたいです」

同じちゃぶ台返しでも、受け取り方はまったく変わります。

7−2 挑戦した行為そのものへのリスペクトを明示する

方向転換や中止を伝えるときに、最も失われやすいのは

「自分の時間と勇気が、きちんと扱われたかどうか」

という感覚です。メンバーがかけてくれた多大なるカロリーと脂汗、これをきちんと知覚して煎じて完飲する様を見せることで誠意としたいです。

  • この案を出してくれたおかげで、どんな論点が見えたのか
  • どんな学びが得られたのか
  • 次に生かせる資産は何か

を具体的に言葉にして伝えることで

「結果は採用されなかったけれど、やってよかった」

と感じてもらえる余地が生まれます。

これがないと

「自分からアイデアを出すのはやめよう」

という学習につながり、イエスマン化が進んでしまいます。

8. ちゃぶ台返しとイエスマン問題は、「OSの設計」でかなり変わる

ちゃぶ台返しそのものが悪いわけではありません。
状況が変わる中で、決定を修正することは経営の重要な役割です。

一方で、それが常態化すると

  • 社員は「どうせ変わる」と学習し
  • 主体性を出すインセンティブが弱まり
  • 結果としてイエスマンだけが残っていく

という構造が茹でガエルのように出来上がっていきます。

ここから抜け出すためには以下のような方法や考え方をとりいれると良いと考えました。

  • 決め方とやめ方のルールを、最初からセットで設計すること
  • 議論の場では徹底的に、決まった後は前を向くというフォロワーシップの作法を、組織のOSとして明示すること
  • 同期の議論だけでなく、非同期の違和感も拾える場を用意すること
  • ちゃぶ台返し、方向転換やノーを伝えるときに、軸とリスペクトを言葉にすること

9. Kumonoとしてお手伝いできること

Kumonoでも、ご相談をいただいたり、お取り組みさせていただく現場の中で

  • 「決まったはずの施策が直前で覆る」
  • 「モメンタム(勢い)の低下や、結果として主体性を持って取り組めるメンバーが希少化してしまう」

という状況を何度も目にしてきました。

そこで学んだのは

問題なのは「覆すことそのもの」ではなく、
「覆し方」と「フォロワーシップのOS」

ということです。

Kumonoはいわゆる「組織コンサル」ではありません。
プロダクトグロースや事業成長の支援を軸足にしつつ、その成果をきちんと出すために

  • 現場が動きやすい意思決定の流れ
  • モメンタムが落ちにくい役割分担
  • 挑戦する人が潰れないフォロワーシップの作法

といった「戦える構造づくり」にも踏み込んで伴走する、というスタンスです。

たとえば、プロダクトや事業のグロースプロジェクトの中で

  • 現状の意思決定プロセスを可視化する
  • ちゃぶ台返しがどこで生まれているかを一緒に棚卸しする
  • 経営と現場の役割分担や「どこまで誰が決めるか」の線引きを整理する
  • フォロワーシップのグラウンドルールを言語化し、日々の運用に落とす

といったところまで含めて支援するイメージです。

  • 「ちゃぶ台返しが多い気がする」
  • 「社員の主体性が出てこない」
  • 「経営の意図と現場の受け止め方がズレている気がする」

と感じている経営者やマネージャーの方向けに少しでもこちらの記事がお役に立てれば幸いです。

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