目次
相談するこんな方におすすめ
- ユーザーインタビューを初めて担当することになった方
- 自己流でやってきたが、体系的なやり方を知りたい方
- インタビューはしているが、うまく深掘りできず悩んでいる方
この記事を読むと起こる変化
Before:インタビューで何を聞けばいいか分からない。聞いても「はい」「いいえ」で終わってしまう
After:目的に応じた質問設計ができ、ユーザーの本音や行動の背景を引き出せるようになる
ユーザーインタビューとは
ユーザーインタビューは、商品やサービスの利用者から直接話を聞き、数値データだけでは見えてこないニーズや課題を深掘りする調査手法です。アンケートのように選択肢から選んでもらうのではなく、対話を通じて「なぜそう思ったのか」「どんな状況だったのか」といった背景まで掘り下げられるのが特徴です。
インタビューの形式は大きく3つに分かれます。事前に決めた質問を一問一答で進める「構造化インタビュー」、質問の骨子は決めておきつつ話の流れで柔軟に深掘りする「半構造化インタビュー」、テーマだけ決めて自由に対話する「非構造化インタビュー」です。

実務でよく使われるのは半構造化インタビューです。聞きたいことの軸は押さえつつ、相手が熱量を持って語り始めたらそこを掘り下げる、という柔軟さがあるからです。質問リストを全部消化することより、価値のある情報を引き出すことの方が大事ですよね。
何を明らかにしたいのか
インタビューを始める前に、まず「何を明らかにしたいのか」を言語化しておく必要があります。ここが曖昧だと、話は聞けたけど「で、どうする?」で終わってしまいます。
よくある目的としては、たとえばこんなものがあります。
- 新機能のニーズがあるか検証したい
- 解約したユーザーの離脱理由を把握したい
- サービスを使い続けている理由を言語化したい
- 想定しているペルソナが実態と合っているか確認したい
注意したいのは、「ユーザーインタビューをやること」自体が目的になってしまうケースです。上司に言われたからとりあえずやる、定例で毎月やることになっているから続けている、という状態だと、聞いた内容が施策につながらず形骸化していきます。
目的は「○○を明らかにして、△△の判断に使う」くらいまで具体化しておくと、質問設計もブレにくくなります。
誰に聞くかを決める
目的が決まったら、次は「誰に聞くか」です。当たり前のようですが、ここがずれると欲しい情報が得られません。
たとえば「解約理由を知りたい」のに、熱心に使い続けているロイヤルユーザーに聞いても答えは出てこないですよね。逆に「なぜ継続しているのか」を知りたいなら、解約者ではなく継続者に聞く必要があります。
対象者は大きく3パターンに分けられます。

既存ユーザー(継続中):サービスの価値や継続理由を聞きやすい。ただし好意的な声に偏りやすく、改善点が出てきにくい傾向があります。
離脱ユーザー(解約・休眠):率直な課題や不満を聞ける貴重な機会。ただしサービスへの関心が薄れているので、謝礼なしでは協力を得にくいです。
未利用者(見込み顧客):新規事業や新機能の検証に向いています。ただし自社の顧客基盤がないため、リサーチツールやSNSなど外部での募集が必要になります。
ロイヤルユーザーだけに聞いていると、耳心地のいいフィードバックばかり集まって、本当の課題が見えなくなることがあります。目的に応じて、あえて厳しい声を聞きに行く設計も大事です。
質問を設計する
質問の仕方ひとつで、得られる情報の質は大きく変わります。ここではよくある落とし穴と、それを避けるための考え方を紹介します。
「なぜ」を直接聞かない
インタビューというと「なぜそうしたんですか?」と理由を聞きたくなりますよね。でも「なぜ」と聞かれると、人は無意識にロジックを組み立てて答えようとします。後付けの理由や、きれいに整理されたストーリーが返ってきやすいんです。
本当に知りたいのは、加工される前の「生の情報」です。そこで有効なのが、「なぜ」を「いつ」「何がきっかけで」「どういう経緯で」に言い換えること。時系列に沿った事実を聞くことで、相手が作り上げたストーリーではなく、実際に起きたことを引き出しやすくなります。
たとえば「なぜこのサービスを使い始めたんですか?」ではなく、「このサービスを知ったきっかけは何でしたか?」「最初に使ってみようと思ったのはいつ頃ですか?」という聞き方です。
「欲しいですか?」と聞いてはいけない
新機能や新サービスの検証でやりがちなのが、「こういう機能があったら欲しいですか?」という質問。ほとんどの人は「あったら便利そうですね」と答えます。でも、その多くは実際にはお金を払いません。
「欲しいと思う」と「実際に買う」の間には大きな溝があります。聞くべきは「欲しいかどうか」ではなく、「過去に似たような課題をどう解決しようとしたか」「そのためにお金や時間を使ったことがあるか」といった、実際の行動です。
「普段」ではなく「前回」を聞く
「普段どうしてますか?」と聞くと、平均化された曖昧な答えが返ってきがちです。「前回◯◯したときのことを教えてください」と具体的な場面を指定すると、記憶が鮮明なぶん、詳細な情報が出てきます。
対象者を集める
質問設計ができたら、次は実際に話を聞く相手を集めます。
既存サービスがある場合
すでにユーザーがいるサービスなら、比較的集めやすいです。サービス内アンケートで協力者を募る、メールやアプリ内通知で直接打診する、といった方法が一般的ですね。
新規事業の場合
まだユーザーがいない場合は、ターゲットに近い属性の人を自分やチームメンバーの知り合いから探してみるのが現実的です。「こういう人に話を聞きたいんだけど、周りにいない?」と社内で声をかけたり、SNSで募集をかけたりする方法もあります。最初の数人はこうした泥臭いやり方で集めることが多いです。
謝礼の考え方
謝礼が必要かどうかは、相手との関係性によります。ロイヤルユーザーは「運営と直接話せる」こと自体に価値を感じてくれることが多く、無償でも協力してもらえるケースがあります。一方、解約済みユーザーや利用頻度が落ちているユーザーは、サービスへの関心が薄れているので、Amazonギフト券3,000〜5,000円程度の謝礼がないと協力を得にくいです。
打診メールの書き方
多くの人は「自分なんかが対象のはずがない」と思っています。「ヘビーユーザー向けだろう」「1時間も話すことなんてない」と身構えてしまう。これを解きほぐす工夫が必要です。
たとえば「ご利用頻度に関わらず、お気軽にご参加ください」「45分〜1時間弱程度でお話を伺えれば幸いです」といった文言を入れるだけで、心理的なハードルは下がります。「1時間」と書くと重く感じるし、「30分」だと聞きたいことが聞ききれない。「45分〜1時間弱」という表現がちょうどいいバランスです。
反応率を管理する
ユーザーインタビューは一度きりではなく、継続的にやるものです。だからこそ、反応率の管理が大事になります。全会員に一斉送信したり、セグメントを絞らずに乱発したりすると、候補者を刈り取りすぎて次回以降の募集が難しくなります。初回で反応率を測定しておき、必要人数から逆算して送信対象を決める。将来の自分を楽にするための設計です。
当日の進め方と本音を引き出すコツ
いよいよインタビュー当日。準備した質問をぶつけるだけでは、表面的な回答しか返ってきません。本音を引き出すためのコツを紹介します!
最初の3分でラポールを築く
いきなり本題に入らず、まずは話しやすい空気を作ります。「今日はどちらからですか?」「お仕事は何時までですか?」など、絶対に答えられるライトな質問から始める。緊張をほぐしながら、相手の属性や状況も把握できます。
「正解はない」と伝える
「率直なご意見をいただきたいので、遠慮なくお話しください」「批判的なご意見も大歓迎です」と最初に伝えておくと、相手が「いいことを言わなきゃ」というプレッシャーを和らげるようにしましょう。
沈黙を恐れない
質問した後、相手が黙ると不安になってつい言葉を足したくなります。でも、沈黙は相手が考えている時間です。待つことで、より誠実で深い回答が出てくることがあります。焦って次の質問に移らない。
熱量がある部分を掘り下げる
質問リストを全部消化することより、相手が熱を持って語り始めた部分を深掘りする方が価値があります。「そこ、もう少し詳しく聞かせてください」と掘っていく。100%質問項目に沿わなくても大丈夫です。
オウム返しで「筆を乗せる」
相手の発言を繰り返したり、少し言い換えたりすることで、「ちゃんと聞いてもらえている」という安心感が生まれます。すると相手の口が滑らかになり、より深い話が出てきやすくなります。
相手がストーリーを作り始めたら
話しているうちに、相手が自分の中できれいなロジックを組み立て始めることがあります。「つまり◯◯ということですね」とまとめに入られたら要注意。そこで「ちなみに、それを最初に感じたのはいつ頃ですか?」と時系列のファクトに戻すことで、加工される前の情報を引き出せます。
録画・録音の許可を取る
当日の記録は必須です。冒頭で「記録のため録画させていただいてもよろしいですか」と許可を取りましょう。メモを取りながら聞くのは難しいので、録画に任せて「聞くこと」に集中する方がいい情報を引き出せます。
当日使えるテクニックは「ユーザーインタビューで今日から使える小技集6選」でも詳しく紹介しています。
よくある失敗パターン
やり方を押さえていても、陥りやすい落とし穴があります。
仮説を確認するだけになっている
「自分たちの仮説が正しいか確認したい」という気持ちが強すぎると、無意識に都合のいい情報だけを拾ってしまいます。「やっぱりそうですよね」と納得して終わるインタビューは危険信号。仮説を覆す情報こそ価値があると意識しておく必要があります。
誘導質問をしてしまう
「この機能、使いにくくなかったですか?」のように、答えを含んだ質問をしてしまうケース。相手は空気を読んで「そうですね」と答えがちです。「この機能を使ったとき、どうでしたか?」とニュートラルに聞く。
1回で完璧にやろうとする
最初から完璧なインタビューを目指す必要はありません。1回やってみて、「この質問は聞いても意味なかったな」「ここはもっと掘るべきだった」という学びを次に活かす。継続的にやる前提で、改善しながら回していけばいいんです。
インタビューでの仮説検証の落とし穴については「ユーザーインタビューで陥りがちな「仮説補強の罠」から抜け出す2軸思考法」で詳しく解説しています。
インタビュー結果の活かし方
インタビューは聞いて終わりではありません。得られた情報をどう整理し、次のアクションにつなげるかが大事です。
記録の残し方
録画・録音したデータは、文字起こしツールで書き起こしておくと後から検索しやすくなります。全文を残す必要はなく、重要な発言や印象的なエピソードをピックアップしてまとめておけば十分です。
ポイントは、相手の発言をそのまま残すこと。要約や解釈を加えると、元の情報が歪んでしまいます。「生の声」として残しておくことで、後から別の視点で見返すこともできます。
複数人の話を横断して見る
1人の話だけで判断するのは危険です。3〜5人に聞いてみると、共通して出てくる話と、その人だけが言っていることが見えてきます。複数人から同じような話が出てきたら、それは個人の意見ではなく、構造的な課題やニーズである可能性が高いです。
「で、どうする?」に答えられる形でまとめる
インタビュー結果を共有するとき、「こんな声がありました」で終わると、聞いた側は「で、どうする?」となります。「この課題が複数人から出たので、◯◯の改善を検討すべき」「この仮説は支持されなかったので、方向転換が必要」といった形で、次のアクションにつながるまとめ方を意識する。インタビューの目的に立ち返って、何が明らかになり、それを踏まえてどう判断するかをセットで伝えます。
まとめ
ユーザーインタビューは、目的を決める → 誰に聞くか決める → 質問を設計する → 対象者を集める → 実施する → 結果を活かす、という流れで進めます。
大事なのは、最初から完璧を目指さないこと。やってみて初めて「この質問は機能しなかった」「ここをもっと掘るべきだった」と分かることがたくさんあります。1回で終わりにせず、継続的にユーザーの声を聞く仕組みを作っていくことが、プロダクト改善の土台になります。
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