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相談する「顧客インタビューをやりたいが、何を聞けばいいかわからない」「解約顧客には聞いているが、継続顧客にも聞くべき?」
顧客インタビューは、サブスクリプション事業の改善において非常に有効な手法です。ただ、「誰に」「何を」聞くかによって、得られる示唆はまったく異なります。
この記事では、継続顧客と解約顧客それぞれに聞くべき質問の違いについてお伝えします。
なぜ「継続顧客」にもインタビューすべきなのか
解約顧客へのインタビューを実施している事業は多いです。解約理由を深掘りし、改善につなげる。これは正しいアプローチです。
一方で、継続顧客へのインタビューを実施している事業は意外と少ない印象があります。「続けてくれている人には特に聞くことがない」と思われがちです。
でも、継続顧客にしかわからない情報があります。
実際の事例
あるオンライン習い事サービスでは、解約しそうな会員が出ると、エース社員が電話やメッセージで熱量高く引き止めていました。属人的なスキルで一定の成果は出ていたものの、「なぜ続けてくれているのか」「なぜ本当は辞めたのか」が社内で明確に定義されないまま、同じ問題が別の顧客で繰り返されていたのです。
このサービスが顧客インタビューの設計を見直したことで、見えてきたものがあります。
継続顧客からわかること
- なぜ続けているのか:解約顧客にはわからない「継続の理由」
- 何に価値を感じているか:サービスのどこが刺さっているか
- どう使っているか:想定通りの使い方か、意外な使い方か
- 不満はあるか:続けているが改善してほしい点
特に重要なのが、「なぜ続けているか」です。解約顧客に聞いても、彼らは辞めた人なのでこの答えを持っていません。
継続顧客が感じている価値を言語化できれば、それを他の顧客にも再現できる可能性があります。マーケティングメッセージの改善、オンボーディングの設計、機能の優先順位付けなど、さまざまな施策に活かせます。
解約顧客へのインタビュー
まず解約顧客へのインタビューから書きます。
導入時の状況を聞く
解約理由を理解するには、そもそも「なぜ契約したか」から遡る必要があります。
- 「このサービスを知ったきっかけを教えてください」
- 「契約前、どんな課題を解決したいと思っていましたか?」
- 「他に検討したサービスはありましたか?なぜこちらを選びましたか?」
- 「契約時、どんな期待を持っていましたか?」
導入時の期待を把握することで、期待と現実のギャップが見えてきます。
利用状況を聞く
実際にどう使っていたかを掘り下げます。
- 「どのくらいの頻度で使っていましたか?」
- 「主にどの機能を使っていましたか?」
- 「使い方で困ったことはありましたか?」
- 「使う頻度に変化はありましたか?いつ頃から変わりましたか?」
利用状況の変化は、解約の予兆を特定するヒントになります。
解約の経緯を聞く
解約に至った経緯を時系列で理解します。
- 「いつ頃から解約を考え始めましたか?」
- 「解約を考え始めたきっかけは何でしたか?」
- 「最終的に解約を決めた理由を教えてください」
- 「解約を思いとどまる可能性はありましたか?何があれば続けていましたか?」
「解約を考え始めたタイミング」と「実際に解約した日」は違うことが多いです。この差を理解することで、解約前にアプローチできる機会が見えてきます。
退会者インタビューで見えた構造的な問題
先ほど紹介したオンライン習い事サービスの退会者へのインタビューでは、「体験時の担当者と継続時の担当者のスタイルが違い、期待値とのギャップが生まれていた」ことがわかりました。体験では「テンポよく褒めて盛り上げるスタイル」だったのが、担当者は「じっくり待つスタイル」。顧客は不満を言い出せないまま退会していたのです。
これは「解約理由は何ですか?」と聞いても出てきません。導入時の期待から丁寧に遡ることで、初めて見えてくる構造です。
改善への示唆を聞く
今後の改善につながる示唆を得ていきます。
- 「こうなっていたら続けていた、ということはありますか?」
- 「他の人にこのサービスを勧めるとしたら、どんな点を伝えますか?逆に、注意点は?」
- 「今後のサービス改善に向けて、何かアドバイスがあれば教えてください」
解約者だからこそ言える「本音のフィードバック」を引き出します。
継続顧客へのインタビュー
次に、継続顧客へのインタビューで聞くべき質問です。解約顧客とは聞くポイントが異なります。
価値の認識を聞く
継続している顧客が「何に価値を感じているか」を言語化してもらいます。
- 「このサービスの一番の価値は何だと思いますか?」
- 「このサービスがなくなったら、何が困りますか?」
- 「他のサービスと比べて、ここが良いと思うポイントは?」
- 「最初に期待していたことと、今感じている価値は同じですか?変わりましたか?」
継続顧客が言語化する価値は、マーケティングメッセージに活かせます。
利用シーンを聞く
どんな状況で、どう使っているかを具体的に聞きます。
- 「どんなときにこのサービスを使いますか?」
- 「1日や1週間で、どのくらい使っていますか?」
- 「チームで使っていますか?どんな役割の人が使っていますか?」
- 「どんな場面でこのサービスを使いますか?」
想定していなかった使い方が見つかることもあります。それがヒントになって、新しい機能や訴求の方向性が見えることも。
不満や改善要望を聞く
継続しているからといって、不満がないわけではありません。
- 「このサービスで改善してほしい点はありますか?」
- 「使っていて困ることや、ストレスを感じることはありますか?」
- 「あったら嬉しい機能はありますか?」
- 「解約を考えたことはありますか?あるとすれば、どんなときでしたか?」
最後の質問は重要です。継続顧客でも「解約を考えたことがある」人は少なくありません。何がきっかけで思いとどまったかを聞くと、継続の決め手が見えてきます。
実際に見えてきた発見の事例
先ほど紹介したオンライン習い事サービスで継続者にインタビューした結果、興味深い発見がありました。
継続者の一人は「最初の3ヶ月は『ちゃんと受けさせなきゃ』とイライラしていたが、担当者から『まずは楽しむことが大事』と繰り返し言われて、自分の向き合い方が変わった」と語りました。
これは退会者向けのインタビューからは出てこない示唆でした。退会者は「合わなかった」で終わりますが、継続者は「合わせ方を見つけた」プロセスを語ってくれるのです。
推奨意向を聞く
他者への推奨意向は、顧客満足度の指標になります。
- 「このサービスを他の人に勧めたいと思いますか?」
- 「勧めるとしたら、どんな人に勧めますか?」
- 「勧めるとき、どんな点を推しますか?」
「勧めたい相手」を聞くと、ターゲット顧客の解像度が上がります。「勧めるときの推しポイント」は、顧客目線の価値訴求として使えます。
インタビュー設計のポイント
継続・解約どちらのインタビューでも、共通して意識すべきポイントがあります。
オープンクエスチョンを基本にする
「はい/いいえ」で答えられる質問(クローズドクエスチョン)ではなく、自由に語ってもらう質問(オープンクエスチョン)を中心にします。
- 悪い例:「サポート対応には満足していましたか?」
- 良い例:「サポートを利用したことはありますか?どんな体験でしたか?」
具体的なエピソードを聞く
抽象的な感想ではなく、具体的なエピソードを聞き出します。
- 悪い例:「使いやすかったですか?」
- 良い例:「最初に使ったとき、どう感じましたか?印象に残っている場面はありますか?」
具体的なエピソードには、改善のヒントが詰まっています。
沈黙を恐れない
質問をした後、相手がすぐに答えなくても焦らないことが大事です。考える時間を与えることで、より深い回答が得られます。
沈黙が続いたら補足質問をしてもいいですが、すぐに次の質問に移ると浅い回答しか得られません。
(以下の記事の小技3に詳細記載しています)
仮説を持ちつつ、押し付けない
「きっとこういう理由で解約したんだろう」という仮説を持ってインタビューに臨むのは良いことです。ただ、その仮説を押し付けないよう注意が必要です。
- 悪い例:「価格が高いと感じて解約されたんですよね?」
- 良い例:「解約を決めた一番の理由は何でしたか?」
仮説は検証するものであって、確認するものではありません。
インタビュー後のアクション
インタビューで得られた情報を、どう施策に活かすかが最も重要です。
パターンを抽出する
複数のインタビューを実施したら、共通するパターンを探していきましょう。
- 解約顧客に共通する「つまずきポイント」は何か
- 継続顧客に共通する「価値認識」は何か
- 継続顧客と解約顧客の「差分」は何か
1人の意見に引っ張られず、複数のインタビューから傾向を読み取ることが大事です。
定量データと突き合わせる
インタビューで得られた定性情報を、定量データと突き合わせて検証します。
- 「オンボーディングでつまずいた」という声が多い → オンボーディング完了率のデータを見る
- 「〇〇機能に価値を感じている」という声が多い → その機能の利用率と継続率の相関を見る
定性と定量を組み合わせることで、より確度の高い示唆が得られます。
まとめ
継続顧客と解約顧客、それぞれに聞くべき質問の違いをお伝えしました。
解約顧客に聞くべきこと
- 導入時の期待と課題
- 利用状況の変化
- 解約の経緯とタイミング
- 改善への示唆
継続顧客に聞くべきこと
- 感じている価値
- 具体的な利用シーン
- 不満や改善要望
- 推奨意向
解約顧客だけでなく継続顧客にもインタビューすることで、「なぜ辞めたか」だけでなく「なぜ続けているか」がわかります。この両方を理解することで、効果的な施策につなげられる可能性が高まります。