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顧客 ロイヤルティを高めるには?戦略・施策・事例をまとめて解説

顧客 ロイヤルティを高めるには?戦略・施策・事例をまとめて解説

こんな方におすすめ

  • 顧客ロイヤルティを高めたいが、何から手をつければいいか分からない
  • NPSを測ったが、改善につながらない
  • ポイントプログラムやCX改善を検討しているが、効果が出るか不安

この記事を読むと

Before:施策を打っても成果が見えず、何が正解か分からない

After:顧客理解から施策設計までの流れが分かり、自社に合った打ち手が見える


施策から入ると空回りする理由

「とりあえずポイント制度を作ろう!」「他社もやってるんでコミュニティ作りませんか」。

顧客ロイヤルティを高める方法として、よく挙げられるのがこのあたりです。

  • ポイントプログラムの導入
  • カスタマーサポートの品質向上
  • パーソナライズされた体験の提供
  • 顧客コミュニティの構築

どれも有効な施策ですし、成功事例も多いです。

一方で、目に見えやすい施策というある種の「鎮痛剤」に飛びついていませんか?

ポイントプログラム、カスタマーサポートの強化、パーソナライズ、コミュニティ構築...。どれも有効な打ち手です。成功事例も多い。ただ、これらを「とりあえずやってみる」だけでは、なかなか成果につながりません。

なぜでしょうか。「なぜ顧客がロイヤルなのか(あるいはロイヤルでないのか)」が分からないまま施策を打っているからです。

たとえば、NPSを測って「推奨者が少ない」と分かったとします。では、どこを改善すれば推奨者が増えるのか? サポート対応? 価格? プロダクトの機能? NPSの数字だけでは、具体的な打ち手が見えません。

「CXを改善しよう」と決めても同じです。顧客接点は無数にあるので、どの接点が、どの顧客セグメントにとって重要なのか。それが分からないまま改善しても、労力に見合った成果は出にくいですよね。

そのため、施策の前に顧客理解というステップを踏むことが重要です。飛ばしがちですがここを省略すると施策が空回りしやすくなってしまいます。

顧客ロイヤルティの定義や測り方については、こちらの記事で詳しく解説しています。

顧客理解の具体的な進め方

顧客理解といっても、漠然と「お客様の声を聞こう」では進みません。具体的には、行動データの分析顧客へのインタビュー、この2つを組み合わせて進めます。

行動データで見るべきポイント

まずは、ロイヤルティが高い顧客と低い顧客で、行動データにどんな差があるかを見ます。

たとえば、こんな観点です。

  • 初期行動の違い:継続率が高い顧客は、最初の1ヶ月で何をしているか? 特定の機能を使っている、特定のコンテンツを見ている、など
  • 利用頻度・深度の違い:週に何回ログインしているか、どの機能をどれくらい使っているか
  • 離脱前の兆候:解約した顧客は、解約の1〜2ヶ月前にどんな行動をしていたか

こうしたデータの差分から、「ここが効いているのでは?」という仮説が見えてきます。

ただし、データだけでは「なぜそうなのか」は分かりません。相関は見えても、因果は見えない。だからインタビューが必要になります。

インタビューで聞くべきこと

ロイヤルティが高い顧客、低い顧客、それぞれに直接話を聞きます。

ポイントは、「なぜ」を直接聞かないことです。

「なぜ続けているんですか?」と聞くと、人は後付けでそれっぽい理由を答えてしまいます。本人も自覚していない本当の理由は、こうした質問では出てきません。

代わりに、事実を聞くアプローチが有効です。

  • 「最近、このサービスを使ったのはいつですか?」
  • 「そのとき、何をしようとしていましたか?」
  • 「使い終わったあと、どうしましたか?」

こうした4W1H(いつ・どこで・誰が・何を・どうした)で具体的な行動を聞いていくと、顧客自身も気づいていなかった利用文脈や価値が見えてきます。

インタビューの具体的なやり方については、こちらの記事で詳しく解説しています。

両方を行き来して仮説を立てる

行動データとインタビュー、どちらか一方だけでは不十分なことが多いです。

データで見つけた仮説を、インタビューで深掘りする。インタビューで出てきた仮説を、データで検証する。この行き来を繰り返すことで、「なぜロイヤルティが高いのか/低いのか」の解像度が上がっていきます。

たとえば、データで「初月に○○機能を使った顧客は継続率が高い」と分かったとします。でも、それだけでは「○○機能を使わせれば継続率が上がる」とは言えません。

インタビューで深掘りすると、「○○機能を使う人は、そもそもサービスの価値を理解して入会している」ことが分かるかもしれない。だとすれば、打ち手は「○○機能への導線を強化する」ではなく、「入会前の期待値を正しく伝える」になります。

この解像度の違いが、施策の精度をまったく変えます。

顧客インサイトの見つけ方については、以下の記事も参考になります。

セグメント別の施策設計

顧客理解が進んだら、次は施策の設計です。

ここで役立つのが、心理ロイヤルティ × 行動ロイヤルティの4象限です。顧客ロイヤルティには「心理面(好き・信頼している)」と「行動面(実際に使っている・買っている)」の2軸があり、この掛け合わせで顧客を4つのタイプに分類できます。

(※この4象限の詳しい解説は、顧客ロイヤルティとは?の記事をご覧ください)

大事なのは、タイプによって打つべき施策が違うということ。全員に同じ施策を打っても効率が悪いですし、響かない相手に労力をかけても成果は出ません。

それぞれのタイプに対するアプローチの考え方を整理します。

①心理も行動も高い(本当のファン)

このサービスが好きで、実際によく使っている。理想的な状態です。

このタイプには、推奨を促す施策が有効です。紹介プログラム、レビュー依頼、コミュニティへの招待など。すでにロイヤルティが高いので、「もっと好きになってもらう」より「周囲に広めてもらう」方向にエネルギーを使う方が効率的です。

また、このタイプの顧客が「なぜファンになったのか」を深掘りすることで、他のタイプを引き上げるヒントが得られます。

②心理は高いが行動が低い(好きだけど使えていない)

サービスのことは好きだし信頼もしている。でも最近は使えていない。忙しくて、なんとなく離れてしまった。

このタイプには、復帰のきっかけを作る施策が有効です。リマインドメール、休眠顧客向けのキャンペーン、新機能のお知らせなど。

心理的なロイヤルティはあるので、ちょっとしたきっかけで戻ってきてくれる可能性が高い。逆に、放置すると徐々に心理ロイヤルティも下がり、③や④に移行してしまいます。

③心理は低いが行動が高い(惰性で続けている)

特に愛着はないが、なんとなく続けている。解約が面倒、他に良いものがない、といった理由で継続しているタイプです。

このタイプは要注意です。データ上は「継続顧客」に見えますが、競合の魅力的なキャンペーンや、ちょっとしたきっかけであっさり離脱します。

打ち手としては、サービスの価値を再認識してもらう施策が考えられます。オンボーディングのやり直し、活用事例の紹介、「こんな使い方もできます」という提案など。

ただし、このタイプ全員を引き上げようとするのは現実的ではありません。コストを考えると、①②のタイプに注力した方が効率的な場合もあります。

④心理も行動も低い(離脱寸前)

もう使っていないし、愛着もない。解約は時間の問題。

このタイプに対して、無理に引き止め施策を打っても効果は薄いことが多いです。むしろ、なぜこの状態になったのかを分析して、他の顧客が同じ道をたどらないようにすることの方が重要です。

離脱前の行動パターンを把握しておけば、③のタイプが④に移行しそうなタイミングで早めに手を打てます。

顧客ロイヤルティを高める戦略と施策

ここまで、顧客理解とセグメント別のアプローチを見てきました。ここで改めて、ロイヤルティを高めるための戦略と具体的な施策を整理します。

戦略の方向性

顧客理解を踏まえた上で、ロイヤルティを高める戦略は大きく3つに整理できます。

①継続のハードルを下げる(行動ロイヤルティ強化) 使い続けやすい仕組みを作り、離脱のきっかけを減らす

②価値の実感を増やす(心理ロイヤルティ強化) サービスの価値を再認識してもらい、「続けていてよかった」と思える体験を作る

③つながりを作る(心理ロイヤルティ強化) ブランドとの関係性を深め、顧客同士のコミュニティを育てる

施策の例

それぞれの戦略に対応する施策を挙げてみます。

①継続のハードルを下げる

  • オンボーディングの強化(初期離脱を防ぐ)
  • リマインド・プッシュ通知(休眠顧客の復帰)
  • 解約導線の見直し(引き止めではなく、理由の把握)
  • ポイントプログラム(継続インセンティブ)

②価値の実感を増やす

  • 活用事例の紹介(他の顧客の使い方を見せる)
  • 利用状況レポート(あなたはこれだけ使っています)
  • 新機能・改善のお知らせ(進化している実感)
  • カスタマーサポートの品質向上(困ったときの安心感)

③つながりを作る

  • 会員限定コンテンツ(特別感)
  • コミュニティ・イベント(顧客同士のつながり)
  • ブランドストーリーの発信(価値観の共有)
  • 紹介プログラム(ファンが広げる仕組み)

施策の選び方

全部やる必要はありません。大事なのは、自社の顧客がどのセグメントに多いかによって優先順位を決めること。

たとえば、③の「惰性で続けている」顧客が多いなら、②の「価値の実感を増やす」施策を優先する。①の「本当のファン」が多いなら、③の「つながりを作る」施策でさらに推奨を促す。

顧客理解ができていれば、どこに注力すべきかが見えてきます。

事例で見る顧客ロイヤルティ向上のアプローチ

ここまで、顧客理解からセグメント別の施策設計までの流れを見てきました。実際にどう進めるのか、事例を交えて紹介します。

保険系サブスクリプションサービスでの調査事例

以前、クライアント企業の競合にあたる保険系の月額サービスで、継続ユーザーへのインタビュー調査を行ったことがあります。

興味深かったのは、同じ「継続ユーザー」でも、続けている理由が大きく2パターンに分かれたことでした。

ひとつは、サービスの機能や価値を深く理解し、「これがないと困る」と判断して続けている人。日常的な使い方も定着していて、代替手段がないことを実感しています。

もうひとつは、「なんとなくお守り感覚」で続けている人。キャンペーンきっかけで入会し、機能の理解は浅い。続けている理由も「安心感」とか「まあ解約するほどでもない」といった感覚でした。

データ上はどちらも「継続顧客」です。でも、前者は①の「本当のファン」に近く、後者は③の「惰性で続けている」に近い。競合が魅力的なキャンペーンを打ったとき、後者は簡単に離脱するリスクがあります。

この調査から見えてきたのは、「継続率」という数字だけでは顧客の実態は分からないということ。そして、後者のような顧客には「サービスの価値を再認識してもらう施策」が必要だということでした。

モンベルの有料会員制度「モンベルクラブ」

公開情報ベースの事例も紹介します。

アウトドア用品大手のモンベルは、「モンベルクラブ」という会員制度を運営しています。注目すべきは、年会費1,500円の有料会員にもかかわらず、会員数が120万人を超えているとのことです。しかも更新率は8割以上といいます(※1)。

無料のポイントカードが当たり前の時代に、なぜ有料でもこれだけの顧客が集まり、継続するのか。

まず、経済的なメリットがしっかりあること。会員は購入金額に応じてポイントが貯まり、継続年数や累計購入金額に応じてポイント加算率が上がっていきます。初年度は5%ですが、継続すれば最大9%まで上がる(※2)。アウトドア用品は単価が高いので、年会費1,500円は十分に回収できる設計になっています。オンラインストアの送料無料も地味に大きい。

ただ、経済的メリットだけなら他社でも真似できます。モンベルクラブが強いのは、それ以外の情緒的なつながりがあること。

会員には季刊の会報誌『OUTWARD』が届きます。これが単なるカタログではなく、アウトドアの楽しみ方や自然との向き合い方を伝える読み物として作り込まれている。全国2,300以上の提携施設(フレンドショップ)で優待が受けられたり、会員限定イベント「フレンドフェア」に参加できたりもします。

山やキャンプ場といったフィールドに向かうとき、そのそばにモンベルがいてくれている感覚。「自然に向かいたいな」という気持ちが、モンベルというブランドに投影されているような親近感。これは単なるポイント還元では生まれない、心理ロイヤルティそのものです。

創業者の辰野勇氏は「単なる顧客の囲い込みではなく、自然を愛するファンと理念を分かち合う」ことがモンベルクラブの目的だと語っています(※3)。ポイントや割引といった「お得さ」だけでロイヤルティを維持しようとすると、競合がより良い条件を出したときに離脱されます。モンベルの事例は、経済的メリットを土台にしつつ、心理ロイヤルティで差別化している好例です。

まとめ

顧客ロイヤルティを高める施策として、ポイントプログラム、CX改善、パーソナライズ、コミュニティ構築などがよく挙げられます。どれも有効な打ち手ですが、「とりあえずやってみる」だけでは成果につながりにくいのが難しいところです。

大事なのは、施策の前に顧客理解というステップを踏むこと。飛ばしがちですが、ここを省略すると施策が空回りしやすくなってしまいます。

顧客理解の進め方としては、行動データの分析顧客へのインタビューを組み合わせるのが有効です。データで仮説を立て、インタビューで深掘りする。インタビューで見えた仮説を、データで検証する。この行き来で「なぜロイヤルなのか」の解像度を上げていきましょう。

解像度が上がれば、心理 × 行動の4象限で顧客をセグメントし、それぞれに合った施策を設計できるようになります。全員に同じ施策を打つよりはるかに効率的なはずです。

モンベルの事例でも見たように、経済的メリット(ポイント還元)は土台として重要ですが、それだけでは差別化できません。心理ロイヤルティ(ブランドへの愛着や価値観のつながり)をどう育てるかが、長期的な継続につながります。

まずは自社の顧客が「なぜ続けているのか」「なぜ離脱するのか」を知ることから始めてみてください。


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注釈

※1:FASHIONSNAP「会員数は120万人超え、創業50年のモンベルを支える有料会員制度の全貌」(2025年9月) https://www.fashionsnap.com/article/montbell-club/

※2:モンベル公式サイト「モンベルクラブ・メンバーズカード」 https://club.montbell.jp/aboutcard/standard/

※3:Forbes JAPAN / OCEANS「モンベルの『年会費1500円』ポイントカードに100万人が登録する理由」 https://oceans.tokyo.jp/article/detail/35196

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