目次
相談するこんな方におすすめ
- 調査会社に頼らず自分たちでN1インタビューをやりたい
- やってみたけど「で、どう施策に繋げるの?」で止まった
- アンケートだけでは見えない顧客心理を掴みたい
記事を読むとどんな変化があるか?
Before:何人にやればいい?聞いた後どうすれば?が分からない
After:設計から分析、施策への繋げ方まで一連の流れが掴める
N1インタビューとは
N1インタビューは、1人の顧客を対象にじっくり話を聞く手法です。
アンケートが「広く浅く」傾向を掴むのに対して、N1インタビューは「狭く深く」1人の行動や感情を掘り下げます。「いつ、どうやって知ったのか」「なぜ使い続けているのか」「どこで迷ったのか」といった、数字では見えない部分を理解するのが目的です。
グループインタビューとの違いもあります。複数人で話すと、どうしても周囲の意見に引っ張られたり、本音が言いづらくなったりする。1対1だからこそ、その人固有の文脈や感情を深掘りできます。
「たった1人の意見で偏らない?」という疑問はもっともです。ただ、N1インタビューのゴールは「答えを得る」ことではなく「仮説を見つける」こと。統計的な検証はアンケートや行動データでやればいい。まずは1人の顧客を深く理解することで、アンケートでは出てこない仮説の種を見つける。それがN1インタビューの役割です。
人数については後ほど詳しく触れますが、結論から言えば10人程度で十分なケースがほとんどです。

N1インタビューが有効な場面
N1インタビューは万能ではありません。ただ、特定の場面ではアンケートや行動データだけでは得られない示唆を引き出せます。
新規事業・新機能の仮説探し
「こういう機能があったら使われるはず」という思い込みで開発を進めて、リリース後に「あれ、使われない」となるケースは多いですよね。作る前に想定ユーザーに話を聞くことで、そもそもの課題認識がズレていないか、解決策の方向性は合っているかを確かめられます。
ヤマップさんとのプロジェクトでは、新サービス開発のフェーズでN1インタビューを実施しました。ユーザーが山に登るときに何を考え、どんな不安や期待を持っているのか。行動データだけでは見えない文脈を掴むことで、サービスの方向性を固めていきました。
→ 詳しくはヤマップ様の事例インタビューをご覧ください
解約理由の深掘り
解約時のアンケートで「価格が高い」と回答されても、本当の理由は別にあることが多いです。「価格が高い」は答えやすいから選ばれているだけで、実際には「期待した効果が得られなかった」「使い方が分からなかった」といった理由が隠れている。
N1インタビューで「いつ頃から使わなくなりましたか?」「そのとき何がありましたか?」と時系列で聞いていくと、アンケートでは出てこない離脱のきっかけが見えてきます。
継続顧客の理解
解約顧客だけでなく、継続顧客に聞くことも重要です。「なぜ使い続けてくれているのか」を理解することで、自分たちが気づいていなかった価値が見つかることがあります。
PAPAMO様とのプロジェクトでは、継続顧客へのインタビューを通じて、サービスの本当の価値を再発見しました。運営側が想定していた価値と、顧客が感じている価値にズレがあることが分かり、訴求の方向性を見直すきっかけになりました。
→ 詳しくはPAPAMO様の事例インタビューをご覧ください
N1インタビューの設計
インタビューの成否は、当日の進め方よりも事前の設計で決まります。
目的設定が最重要
「顧客の声を聞きたい」は目的ではありません。これで走り出すと、聞いた後に「で、何が分かったんだっけ?」となります。
目的は具体的なリサーチクエスチョンの形にしておくといいです。
- 解約率が高い → なぜ離脱しているのか → どのタイミングで、何がきっかけで離脱しているのか
- 新機能を作りたい → 本当にニーズがあるのか → 今どうやって課題を解決しているのか、何に困っているのか
- LTVを上げたい → 何が継続理由になっているのか → どんな場面で価値を感じているのか
このレベルまで具体化しておくと、誰に聞くべきか、何を聞くべきかが自然と決まってきます。
誰に聞くかで結果が変わる
対象者選定は目的に直結します。
- 解約理由を知りたい → 最近解約した人
- 継続理由を知りたい → 長く使っているロイヤル顧客
- 新規獲得のヒントが欲しい → 最近始めた人、または検討中の人
「とりあえず既存顧客に聞こう」だと、得られる示唆がぼやけます。目的に応じて、意図を持って対象者を選ぶことが大事です。
何人やればいいのか
結論から言えば、10人程度で十分です。5〜6人を超えたあたりから、同じようなパターンが出てくるようになります。逆に言えば、3人程度だと偏りが大きくなるリスクがある。
「10人で本当に大丈夫?」と思うかもしれませんが、N1インタビューの目的は統計的な検証ではなく仮説の発見です。発見した仮説は、その後アンケートや行動データで検証すればいい。
→ 詳しくはたった10人のインタビューで売上改善の糸口が見つかる理由で解説しています
N1インタビュー当日の進め方
設計ができたら、いよいよ当日です。
最初は雑談から
いきなり本題に入ると、相手も身構えてしまいます。最初の5分くらいは雑談でアイスブレイク。天気の話でも、最近あったことでも何でもいいです。「この人になら話しても大丈夫そう」と思ってもらうことが大事です。
時系列で聞くと話しやすい
本題に入ったら、時系列で聞いていくのがおすすめです。
- いつ頃、どうやってこのサービスを知りましたか?
- 検討しているとき、他に比較したものはありましたか?
- 実際に使い始めて、最初の印象はどうでしたか?
- 今はどんな場面で使っていますか?
人は「昨日何食べた?」と聞かれると答えやすいですよね。抽象的な質問より、具体的なエピソードを聞く方が相手も答えやすいし、深い話が出てきます。
「なぜ?」は使いすぎない
深掘りのコツとしてよく「なぜ?を繰り返す」と言われますが、実はこれ、注意が必要です。
「なぜそうしたんですか?」と聞くと、多くの人はその場で筋の通った回答を組み立てようとします。結果として、本当の動機とはズレた「それっぽい理由」が返ってくることがある。
代わりに4W1Hを使うのがおすすめです。
- 「いつ頃からそう思うようになりましたか?」
- 「そのとき、どんな状況でしたか?」
- 「誰かに相談しましたか?」
- 「どうやって解決しようとしましたか?」
エピソードベースで聞いていくと、相手も自然に話せるし、後から解釈しやすい情報が得られます。
もちろん、どうしても理由を確認したい場面では「なぜ?」を使っても構いません。ただ、それがデフォルトの深掘り手法になってしまうと、表面的な回答しか得られなくなるリスクがあります。
→ 詳しくはユーザーインタビューで今日から使える小技集6選もご覧ください
沈黙を恐れない
質問した後、相手が黙ることがあります。つい「つまり、こういうことですか?」と助け舟を出したくなりますが、ここはぐっと我慢。相手が考えている時間かもしれません。
沈黙が続いたら「ゆっくりで大丈夫ですよ」と一言添えるくらいでOKです。
インタビュー後の分析と活用
インタビューは聞いて終わりではありません。ここからが本番です。
よくある「止まる」パターン
「インタビュー盛り上がったね」「いい話聞けたね」で終わってしまうケース、結構多いです。議事録は残ったけど、そこから先に進まない。1ヶ月後には誰も見返さなくなっている。
こうならないために、分析と活用のステップを意識しておく必要があります。
リサーチクエスチョンに戻る
最初に立てたリサーチクエスチョンを思い出してください。インタビューで得られた情報を、このリサーチクエスチョンに対する仮説として整理していきます。
たとえばリサーチクエスチョンが「なぜ3ヶ月目で解約が増えるのか」だったとして、インタビューから以下のような発言が得られたとします。
- 「最初は頑張って使ってたけど、だんだん面倒になって…」
- 「効果が出てるのか分からなくなった」
- 「他のツールと併用してて、結局そっちだけで十分だった」
これを仮説として整理すると:
- 仮説A:習慣化に失敗している(確からしい:複数人から類似発言)
- 仮説B:効果実感が得られていない(要検証:1人だけの発言)
- 仮説C:競合ツールに流れている(想定外:事前に想定していなかった)
このように「確からしい」「要検証」「想定外」などに分類すると、次に何をすべきかが見えてきます。
施策への落とし方
仮説が整理できたら、施策に繋げます。
- 仮説A(習慣化に失敗)→ オンボーディングの改善、リマインド施策
- 仮説B(効果実感がない)→ 成果の可視化、レポート機能の強化
- 仮説C(競合に流出)→ 競合との差別化ポイントの訴求
大事なのは、インタビューで聞いた「お客さんの声」をそのまま鵜呑みにしないことです。「こう言ってたからこうしよう」ではなく、「こう言ってた背景にはこういう課題がありそうだから、こういう施策が有効では」という解釈を挟む。
顧客が言語化できていない本当の課題を見つけ、それに対する解決策を考える。これがN1インタビューを施策に活かすということです。
→ 詳しくはマーケの顧客インタビューを自己満で終わらせず、バリュープロポジションの見直しに活かすには?もご覧ください
N1インタビューでよくある失敗
最後に、やったけどうまくいかないパターンを挙げておきます。事前に知っておけば避けられるものばかりです。
目的が曖昧なまま始める
「顧客の声を聞きたい」で走り出して、聞いた後に「で、何が分かったんだっけ?」となる。リサーチクエスチョンを立てずにインタビューしても、得られるのは雑多なエピソードの山です。
聞きたいことを聞いてしまう
自分の仮説を確認しにいってしまうパターン。「やっぱりこの機能が求められてるんですね?」みたいな誘導質問をしたり、都合のいい発言だけ拾って「やっぱりそうだった」で終わったり。
これは「仮説補強の罠」と呼んでいます。インタビューの目的は仮説を検証することではなく、新しい仮説を見つけること。既存の仮説に固執すると、せっかくのインタビューが台無しになります。
→ 詳しくはユーザーインタビューで陥りがちな「仮説補強の罠」から抜け出す2軸思考法で解説しています
1人の意見を過信する
「お客さんがこう言ってた」を根拠に意思決定してしまうパターン。N1インタビューは仮説発見のための手法であって、その仮説が正しいかどうかの検証は別途やる必要があります。
複数人に聞いて共通するパターンが見えてきたら「確からしい仮説」として扱う。1人だけの発言は「要検証の仮説」として保留する。このバランス感覚が大事です。
聞いて満足、施策に繋がらない
インタビューレポートは立派だけど、その後何も動かない。これも多いです。
対策としては、最初から「誰に・何を報告するか」を決めておくこと。インタビューの結果を誰に共有して、どんな意思決定に使うのかを明確にしておくと、「聞いて終わり」を防げます。
まとめ
N1インタビューは、1人の顧客を深く理解することで、アンケートや行動データでは見えない仮説を発見するための手法です。
- 目的設計と対象者選定が成否を分ける
- 「なぜ?」より4W1Hでエピソードを引き出す
- 聞いて終わりにせず、リサーチクエスチョンに対する仮説を整理
- 1人の意見を過信せず、検証は別でやる
最初から完璧にやろうとしなくて大丈夫です。まずは1人に話を聞いてみるところから始めてみてください。やってみると「こういうことか」と感覚が掴めてきます。
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