目次
相談する誰向けか?
- SaaSやサブスクリプションサービスを運営している方
- 解約理由アンケートを取っているが、結果をどう活かせばいいか悩んでいる方
- 「忙しくなった」「料金が高い」といった回答を見て打ち手に悩んだことがある方
【結論】この記事を読むと何が変わるか
Before: 解約理由アンケートの回答を見て「で、何をすればいいの?」と立ち止まってしまう
After: なぜアンケートから打ち手が見えないのか、その構造が理解でき、別のアプローチが必要だと判断できるようになる
はじめに
継続課金サービスを運営していると、必ずぶつかる壁があります。解約率の改善です。
解約率を下げるために、まず「なぜ辞めたのか」を知ろうとする。当然の発想です。そこで多くの企業が取る手段がサービスキャンセル時に取るアンケートではないでしょうか。
解約手続きの画面で「解約理由を教えてください」と表示し、選択肢を並べる。あるいは自由記述欄を設ける。
しかし、このアンケート結果を見ても、具体的な打ち手が見えてこない。「忙しくなった」「他のサービスを使うことにした」「料金が高い」といった回答が並ぶ。それを見て「じゃあ何をすればいいんだ?」と途方に暮れる。
この記事では、なぜ解約理由アンケートが役に立たないことが多いか、その構造的な理由を解説します。
集まるのは「結果」であって「原因」ではない
解約理由アンケートで集まる回答を見てみましょう。典型的な回答はこうです。
- 「忙しくなった」
- 「他のサービスを使うことにした」
- 「料金が高いと感じた」
- 「思ったより使わなかった」
- 「効果を実感できなかった」
これらは一見すると「理由」に見えます。
一方、「忙しくなった」は、本当に解約の原因でしょうか。
世の中には忙しくても続けているサービスがいくらでもあります。Netflixを契約している人は忙しくないのか?ジムに通い続けている人は暇なのか?そんなことはありません。
「忙しくなった」は、解約を正当化するための説明であって、解約を引き起こした原因ではないのです。
同じことが他の回答にも言えます。「料金が高い」と答えた人は、入会時には同じ料金で納得していたはずです。何が変わったのか?「効果を実感できなかった」と答えた人は、なぜ実感できなかったのか?
アンケートで集まるのは、解約という「結果」に対する後付けの説明であって、解約を引き起こした「原因」ではありません。
なぜ後付けの説明になるのか
人間は、自分の行動を説明するとき、その場で論理を構築します。
人は自分の行動の本当の理由を必ずしも把握していません。聞かれたときに、もっともらしい説明を後から組み立てる。しかも相手は運営側。本音をぶつけても仕方ないし、早く手続きを終わらせたい。結果、誰も傷つかない「綺麗な理由」に落ち着きます。
解約理由アンケートは、まさにこの「綺麗な理由」を促す構造になっています。
解約手続きの画面で「理由を教えてください」と聞かれる。ユーザーは数秒で回答しなければなりません。深く内省する時間はない。そこで、最も説明しやすい理由を選ぶ。
「忙しくなった」は便利な回答です。誰も反論できない。自分を悪者にしなくて済む。サービスへの不満を言わなくて済む。
結果として、アンケートには当たり障りのない回答が集まります。
選択肢がユーザーの回答を誘導する
もう一つの問題は、選択肢自体が回答を誘導することです。
解約理由アンケートの選択肢は、運営側が「こんな理由だろう」と想定して作ります。しかし、ユーザーの本当の理由がそこに含まれているとは限りません。
選択肢に「料金が高い」があれば、なんとなくそれを選ぶ人がいる。本当は料金が問題ではなかったとしても、他に適切な選択肢がなければ、最も近いものを選んでしまう。
自由記述欄を設けても同じです。「特になし」「サービスは良かったのですが自己都合」といった曖昧な回答が増えるだけで、具体的な示唆は得られません。
本当に知りたいのは「手前」で何が起きていたか
解約は、ある日突然起こるわけではありません。
解約に至るまでには、必ず手前があります。何かがきっかけで不満が生まれ、その不満が蓄積し、あるとき「もう辞めよう」という決断に至る。
知りたいのは、この手前で何が起きていたかです。
たとえば、「忙しくなった」と回答した人の手前を掘ると、こんなストーリーが見えてくることがあります。
- 入会時は「週3回使う」つもりだった
- 実際には週1回しか使えなかった
- 「元を取れていない」という感覚が生まれた
- サービスへの優先度が下がった
- 他の予定を優先するようになった
- 「忙しくなった」と認識した
- 解約
「忙しくなった」は、ステップ6の認識に過ぎません。本当の問題は、ステップ2〜3にあります。
この構造が見えれば、打ち手が見えてきます。「週3回使う」という期待値を入会時に調整する。あるいは、週1回でも「元を取れている」と感じられる体験を設計する。これは、アンケートの「忙しくなった」からは出てこないけれど、より本質的な打ち手に近づく可能性が高いです。
アンケートの限界を認識する
解約理由アンケートが全く無意味だとは言いません。大まかな傾向を把握する、定点観測として使う、といった用途はあります。
しかし、アンケート結果から具体的な打ち手を導き出そうとすると、必ず壁にぶつかります。
「料金が高い」が多いから値下げしよう、では安易すぎる。「効果を実感できなかった」が多いから効果を説明しよう、では的外れになりかねない。
解約理由アンケートは、あくまで入口に過ぎません。そこから先、「手前」で何が起きていたかを掘り下げる別のアプローチが必要になります。
「手前」を掘り下げるには
では、「手前」で何が起きていたかをどうやって明らかにするのか。
最も簡単で有効なのは、顧客インタビューです。解約顧客だけでなく継続顧客にも聞くことで、「なぜ辞めたか」と「なぜ続けているか」の両方が見えてきます。
詳しくは以下の記事で解説しています。
サービスの解約率改善、一緒に取り組みませんか?
Kumonoでは、UXリサーチを通じて「なぜユーザーが離れるのか」の構造を明らかにし、具体的な改善策の立案まで伴走しています。アンケートでは見えてこなかった解約の「手前」を、一緒に掘り下げてみませんか?