AI導入の打ち合わせで、刀を抜かずに終わった話
今週、業務効率化について似たような打ち合わせが2件ありました。どちらもAIを使えば色々できそうな話だったのですが、終わってみると、ほとんど業務の進め方について話していました。
ひとつは、お客さんからの申し込みを受け付け、その後の案内やリマインドを複数の案件で回している会社からの相談です。
最初は申し込みの受付まわりが一番手をつけやすそうだと思っていました。ただ、先方から最初に出てきたのは「中途半端に導入して手間が増えるのが一番嫌」という一言でした。以前、システムを導入してみたものの業務に合わず、今はアナログ中心で運用しているそうです。
実際の画面を見せてもらうと、受付はそれほど困っていませんでした。件数は多くなく、案内メールの文面も決まっているので、手間はあまりかかっていません。
大変だったのは、その後のスケジュール管理でした。
案件ごとに「何週間前に何を送るか」が決まっていて、担当の社員の方は、それを手帳や付箋で組んで追いかけていました。かなりの時間を使っているうえ、ダブルチェックしてくれる人もいないので、対応漏れが怖いと話していました。
サクッと片付けるつもりだった受付のすぐ隣に、もっと大きな問題があったわけです。
そこで、まずバラバラになっている予定と対応状況を、ひとつの管理表で追えるようにすることになりました。
AIを使うとしても、「今日はこれをやる日だけど大丈夫?」「この案件はまだ終わっていないよ」と知らせるくらいで十分かもしれません。案内の送信自体は、社員の方が確認してから行います。決まった日付に通知を出すだけなら、AIを使わずに実現する方法もあります。このあたりは、これから具体的に検討するところです。
先方からは、これなら精神的な負担が減りそうだ、という話も出ました。
考えてみると、嫌だったのは単純な作業の量だけではなく、漏れていないかがずっと頭に残っていることだったのだと思います。
もうひとつは、毎月の精算書をつくる業務の相談でした。
取引先から届く請求書に精算書の数字を合わせようとすると、どうしても1円ずれてしまう。担当の方は、その帳尻を合わせるために毎月時間を使っていました。
ところが話を聞いていると、精算書に使う単価は、作成する側で決めてよいことが分かりました。
それなら、そもそも請求書と精算書の金額を1円単位で一致させる必要があるのか、という話になります。
書類の役割と単価の決め方を整理すると、これまでやっていた数字合わせをなくせそうだということになりました。細かい運用はこれから詰める必要がありますが、少なくとも1円の差をなくす仕組みを新たに作る必要はなさそうです。
「そもそもやんなくてよかった」というのが、その場での正直な感想でした。
どちらの打ち合わせでも、技術的にこねくり回すことはできたと思います。
申し込みから入金確認、リマインドまでを全部つなげて自動化する仕組み。請求書を読み取って、数字の差を調べる仕組み。作ろうと思えば色々考えられます。
ただ、実際に困っていることを聞いていくと、そこまで作る必要はありませんでした。
結局、AI導入の前に業務を整理する工程は避けて通れないのだと思います。
業務フローを確認して、それぞれの作業が何のために存在しているのか、誰が何を判断しているのかを整理する。不要な作業があればなくしてしまうし、残す必要のある作業については、どこまで仕組みに任せられるかを考える。
ここを飛ばしてAIの仕組みを作ろうとすると、わけのわからないことになりがちです。
今回の精算書の話なら、そもそも一致させる必要のない数字を、AIを使って必死に一致させようとしていたかもしれません。
案内の話なら、案件ごとの進捗やスケジュールがバラバラな状態で自動化を始めても、AIが何を根拠に判断すればよいのか分かりません。まず、どのお客さんが今どの段階にいて、次に何をする必要があるのかを、確実に把握できる状態にしなければなりません。
AIを使うにしても、結局この整理が必要になります。
そして、そこをちゃんと考えていくと、今回のようにAIを使う必要がなくなったり、使うとしてもずいぶん簡単な仕組みで済むことがあります。
今回の2件は、まだ打ち合わせで方向性が決まった段階です。実際に仕組みを動かして負担が減るかは、これから確かめていくことになります。
それでも、2件続けて似たような結論になったのは面白かったです。
最初に聞いた「中途半端に導入して手間が増えるのが一番嫌」という言葉が、結構印象に残っています。
AIで色々なものを作れるようになったのは楽しいのですが、仕事を減らすための相談で、わざわざ新しい仕事を増やすわけにもいきません。
今回は、刀を抜く前にだいたい話がついてしまいました。