目次
相談するこんな方におすすめ
- 「freee MCP」「Claude × 会計」に興味はあるけど、セットアップ記事だけでは実務のイメージが湧かない方
- 小規模法人の決算を少人数で回していて、AIの活用余地を探している方
<前提>自社の経理まわりの状況
1人法人を設立して、はじめての決算を迎えました。
株式会社Kumonoは受託コンサルティングの会社で、社員は代表の自分1人です。売上の構成はシンプルで、数社からの業務委託報酬がほぼすべてです。経費も役員報酬、家賃、外注費、通信費、交際費、くらいで、製造業や小売業のように仕入や在庫がないぶん、会計処理はかなり素直でした。
会計まわりのツール構成はこうなっています。
- freee会計(ひとり法人プラン):日常の記帳と決算書の作成
- freee申告(スタータープラン):法人税・地方税の申告書作成とe-Tax/eLTAX送信
- Claude(Maxプラン):記帳チェック、会計判断の壁打ち、freee MCPでのデータ操作
日常の経費精算は、freee法人カードでの決済を原則にしています。カード明細がfreeeに自動で取り込まれる特徴を活かすべく、都度証憑を紐付けるフローを歯を食いしばって習慣化しています。この運用があるので、決算時に「1年分の領収書をまとめて処理する」という作業は発生しませんでした。8時間で完走できた背景には、この日常の記帳フローが整っていたことが大きいです。
税理士の方には現状頼んでいません。初年度で事業もシンプルなので、まずは自分で全工程を回してみて、税務処理のリテラシーを上げたいと思ったことと、どこにAIが効くかを体感したかったというのが正直なところです。
わからないことはAI(特にChat GPTのthinking)に壁打ちしつつ、必ず最終的にはfreeeのヘルプや、解決しない場合は行政の窓口への電話など、裏を取るようにしました。やることを把握することから、期末決算の締め作業から申告書の作成から送信までの実作業時間は約8時間で完了しています。
本記事で話す内容は「税理士が要らない」という話では全くないです。(むしろ依頼したい、という趣旨を末尾に記載しています)。この記事はあくまで「決算フローのどこにClaudeが効くか」を具体的に共有するもので、正確性を保証するものではありません。
まず決算をプロジェクト化するところからはじめる
自分の会計リテラシーについて簡単に触れておくと、個人の確定申告は白色・青色ともに経験がありました。白色はアナログに紙で出したこともe-Taxでぽちぽちやったこともあるし、青色はfreeeの画面であれこれ格闘しながら提出したことがあります。
つまり仕訳とか勘定科目とか、最低限の用語や感覚はある状態でした。当然法人決算は初挑戦です。個人の確定申告と比べると必要な書類が断然多く、まずは「何が必要なのか」を把握するところから始めました。
最初にやったのは、GPTなどの公式情報を検索で拾うのがが得意なAIに「1人法人の初年度決算、税理士なしでやる場合に必要なタスクを全部出して」と聞くことでした。かなりの量が返ってきます。ただ、全部を一度にやる必要はなくて、「今やらないとまずいもの」と「申告が終わってからでいいもの」を切り分けるのが先でした。たとえば株主総会議事録は会社法上必要だけど、3月末の申告期限には関係ない。こういう優先順位の判断を壁打ちしながら、タスクリストとタイムラインを作っていきました。
できあがったものはKibelaに「決算プロジェクト」として置いて、Claudeが常に動的にドキュメントを把握・タスクが終わるたびにステータスを更新する運用にしました。完了済み・残タスク・期限が一覧で見えている状態をキープできたので、「今どこにいて、次に何をやるか、峠は超えてるのか」で迷うことがほぼなく、メンタル的にかなり楽になりました。
このプロジェクト化が地味に一番効いたかもしれません。決算作業そのものにAIを使う以前に、作業全体を見渡せる状態を作ったこと。そしてそのドキュメントを常にAIが動的に参照・更新できるようにしておくことで、今どこまで終わったのか、次に何が必要なのかが外れないようにしました。
結局Claude効いた度はどんなもんだったか?
決算の一連の流れを並べてみると、Claudeが効いた工程とそうでない工程がはっきり分かれました。
ちなみにfreee MCPについて時系列を補足しておくと、freee APIをClaude経由で操作できるMCPサーバーは、以前から個人のリポジトリとして公開されていました。ただ個人開発のMCPということでしばらく敬遠していたものの、それが2026年3月2日にfreee公式OSSとして正式に引き継がれたので(GitHub / フリー社のプレスリリース)、決算作業の終盤から使い始めています。つまり、この決算プロジェクト仕上げのタイミングでMCPが加わったという流れです。
自社が主に行った工程 | やること | freeeMCP効いた度 |
|---|---|---|
タスク整理・プロジェクト化 | 全体像の把握、タイムライン作成、税務署への確認事項の洗い出し | ★☆☆ |
記帳チェック・仕訳監査 | 仕訳帳の重複・科目誤り・残高異常の検出 | ★★★ |
会計判断の壁打ち | 科目の選び方、償却の判断、税区分の確認 | ★★★ |
決算整理仕訳 | 創立費償却、敷金振替、源泉税の総額修正 | ★★★ |
freee申告の操作 | 別表の確認・修正、連携ボタン、内訳明細の手修正 | ☆☆☆ |
e-Tax / eLTAX送信 | freee電子申告から(Macだけど問題なくe-Tax/eLTAX使える感動) | ☆☆☆ |
MCPが入る前と後で何が変わったかというと、それまではfreeeの画面を開いて数字を目視で確認し、それをClaudeに伝えて判断を仰ぐ、という往復をしていました。MCPが入ってからは「1月の通信費の内訳を出して」と聞くだけでClaudeがfreeeのAPIを叩いて取引明細まで返してくれるので、確認作業のテンポが明らかに変わりました。一番効いたのは、仕訳帳をまるごと読ませての監査と、会計処理の判断を壁打ちする場面です。
それ以外の定性的な話ですが、GUIでfreeeの画面をぽちぽちすると、特にヘルプを読んだり処理の正確性を都度確認することで必要以上に体力・ライフがすぐにゼロになってやる気が秒速で減っていくのですが、MCP経由だと不用にライフが削れないというか、そこはめちゃくちゃ大事だなと思いました。
次のセクションから、特に効いた工程を具体的に掘っていきます。
一番効いたのは仕訳帳まるごと監査
ClaudeMCPが一番力を発揮したのは、仕訳帳のチェックです。
freee会計から仕訳帳をCSVでエクスポートして、そのままClaudeに読み込ませました。「この仕訳帳を監査して、重複・科目の誤り・残高の異常があれば指摘してほしい」と伝えると、15件の指摘が返ってきました。
たとえばこういうものです。具体的すぎる説もあるので、適当に読み飛ばしてください。
①役員貸付金がマイナス残高になっていた。
原因は7月の返済仕訳が手動と自動で経理の両方で登録されていたことだよと、ピンポイントで原因究明とセットで教えてくれたことです。重複を1件削除したら残高がゼロに戻りました。
今までだったら、人間の私が「役員貸付金がマイナスっておかしくない?」まではギリ気づけたかもしれないですが、そこからどこがミスってるのかなーていうのを探しに行くとなると、心が折れていた気がします。
②カード明細と手動入力の二重登録が複数件あった。
freeeの口座同期で取り込まれた明細と、自分で手入力した仕訳が両方残っているパターンです。旅費交通費、会議費、売掛金の消込で同じことが起きていました。金額が小さいものもありましたが、売掛金の消込が二重になっていた件は放置するとマイナス残高になるところでした。
③敷金が地代家賃に含まれたままだった。
初心者乙、という感じで大変恥ずかしい話ですが、元々は事務所の初期費用をまるごと地代家賃で処理していました。本来は敷金部分については差入保証金として資産計上するのがあるべきであるので、契約書を見て内訳を確認し、振替仕訳を1本入れて対応する、という具体的な処理までAIがやってくれるっていうのはささやかな感動がありました。
上記全体を通じてポイント
ポイントは、Claudeが出した指摘をそのまま鵜呑みにせず、1件ずつfreeeの画面で原因を確認してから修正したことです。「削除して」と言われても、本当に片方が重複なのか、それとも別の取引なのかは人間が判断する必要があります。Claudeは「ここ怪しい」を高精度で拾ってくれますが、最終判断は自分でやるなど、使い分けを心がけました。
じわじわ効いたのは会計判断の壁打ち
仕訳監査ほどの派手さはないですが、じわじわ効いたのがfreee MCP連携と、会計判断の壁打ちです。
実際に使った場面をいくつか紹介します。
①勘定科目の残高や取引明細の確認。
「1月の通信費の内訳を見せて」と聞くと、freeeから取引先ごとの明細を引っ張ってきてくれます。画面を開いて絞り込んで…という手間がなくなるので、ちょっとした確認のテンポが明らかに変わりました。些細な確認はfreeeの画面を直で見るでよくね?という話ではあるのですが、コンテキストを踏まえてAIと相談したい時とかにはClaudeに直で参照させつつ始めた方がやりやすいので、今後も日常的に使うと思います。
②仕訳の誤りの特定と修正。
借入金の返済仕訳で、利息部分が「長期借入金の減少」として記帳されていた件がありました。Claudeが該当の取引を特定して、「この仕訳の利息分は支払利息に振り替えるべき」と指摘。そのままMCP経由で勘定科目を差し替えて修正しました。さらにこの修正をきっかけに、借入金の内訳明細書に記載していた借入額が名目額ではなく、振込手数料が差し引かれた実際の入金額であるべきだということも発覚しています。こういう「1つ直したら芋づる式に別の問題が見つかる」パターンは、Claudeがデータを直接見ているからこそ拾えた部分だなと思います。
その他トピックス
skillを使ってトークン消費量を抑えた
なお、freee MCPを導入する際は、SKILLもあわせてインストールすることをおすすめします。SKILLが入っていないとClaudeがAPIの仕様を推測しながら操作することになり、試行錯誤の回数が増えてトークンの使用量が多くなるような気がしました。SKILLは、公式のGitHubを確認してみてください。
悪かったところ
良いところばかり書いてきたので、悪かったところも書いておきます。
①AIを過信しない
指摘を鵜呑みにするのが怖いなと思っています。公式docを読んでもにっちもさっちもわからん、というものは調査でAIをしばき倒す前に、さっと電話で裏をとるなど、別のアプローチも大事だなと思いました。
例えば、実際にあったこととして、当社は登記上の住所が渋谷で、実際の作業場所が豊島にあるのですが、その場合に地方税はどこに申告するのか。AIは「両方に申告が必要になるよ」と言いましたが、最終的には渋谷都税事務所に電話して確認しました。
私のケースでは、都税事務所への確認の結果「渋谷に一本で出して、別表四の三に豊島を書く」という扱いで足りました。もちろん、地方税は事務所等の実態によって提出先が変わるので、この部分は必ず所轄自治体に確認したほうがよいと思います。こういう実務上のグレーゾーン、AIをしばいてひたすら30分くらい調べていたのですが、電話したら快く1分解決してくださいました。
②Rate Limitにぶつかる。
ClaudeのMAXプラン(100ドル/opus4.6拡張)で使い倒していたところ、2時間弱で50% 程度まで使用量いきました。
Proプランなど抑えめのプランだともしかすると使用制限がきついかもしれないです。
③会計データへのアクセス権を外部に渡しているという危険。
セキュリティの観点については、かなりケアすべき事項だと思いました。
当社の場合は、一人法人ということで導入しやすかったですが、組織拡大して経理業務を別の人が行うとしたら?という問いがあるとしたら及び腰になるかもしれないと思いました。
freee MCPを使うということは、ローカルで動くMCPサーバーにOAuthトークン経由でfreee APIへの権限を与え、ClaudeからそのMCP経由で会計データを読み書きできる状態を作る、ということです。公式OSSになったとはいえ、会計データへのアクセスが可能な状態を作っていることに変わりはありません。当社では1人法人だから自己責任で判断しましたが、チームで経理業務を行っている・経理業務を委託している会社、あるいは顧問先のデータを扱う立場であれば、この判断は慎重になるべきだと思いました。
おまけ。コストと時間の実績
最後に、今回かかったコストと時間をまとめておきます。
ツールのコストとしては、freee会計とfreee申告がいずれもスタータープランで年間あわせて数万円。Claudeは月額のMaxプランです。
税理士の方に依頼することは元々考えていましたが、初年度で複雑性が低いことと、流れや手順を把握して解像度を上げたかったこと、年1の決算を依頼するにしてもfreeeの仕訳周りは自分でやる必要があるとのことだったので、一旦自分でやってみることにしました。
実作業時間は約8時間。内訳としては何をするかの把握に2時間、仕訳帳の監査と修正対応に半分以上を使っていて、freee申告での申告書作成と送信は思ったよりGUIベースで短く終わりました。freee申告が別表を自動生成してくれるので体験はよかったです。
ただし、これはあくまで「コンサル事業で仕入がなく、PLBSがシンプルな1人法人の初年度」の話です。売上の構成が複雑だったり、在庫を持っていたり、従業員がいたりすれば、当然もっと奇々怪々な気配を感じます。
まとめ&振り返り
1人法人の初年度決算を、freee × Claudeで完走しました。振り返ってみて、Claudeが特に効いたのは3つの場面です。
1つ目は、決算作業のプロジェクト化。何をいつまでにやるかの全体像をClaudeと整理し、ドキュメントとして常にAIが参照・更新できる状態にしたことで、初めての法人決算でも迷わず進められました。
2つ目は、仕訳帳の監査。1期分の仕訳帳をまるごと読ませて、重複や科目の誤りを一括で検出できたのは、手作業では現実的にやれない作業です。
3つ目は、会計判断の壁打ち。受取利息の記帳方法や地方税の提出先など、「知らないと損する」系の判断をClaudeが自発的に拾ってくれました。最終的にはfreeeのヘルプや税務署・都税事務所・自治体窓口などに電話で裏を取りましたが、そもそも論点に気づけるかどうかが大きいなと思いました。
最後にひとつ。Claudeを使って決算を進めていると、何事もそれなりにこなせてしまうので、正直なところ万能感がありました。ただ、決算に関して自分が素人であることは変わりません。
逆に、突っ込んだ論点や、当たり前のことを当たり前に理解しているプロが使えば、このツールを用いた会計フローはものすごい勢いでブーストされるんだろうなーという感覚がありました。DIYでやるのも一興と思いつつ、こうした技術やセキュリティにも明るい税理士事務所に依頼できるなら、もはやそれが一番いいかなーという感覚になりました。
もしそのような方がいらしたら、ぜひ営業のご一報をお待ちしております。何か記事に関してご相談がある場合もご連絡いただけますと幸いです。
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