目次
相談するこんな方におすすめ
- AIでスライドを作ってみたけど、結局微調整で時間がかかっていると感じている方
- NotebookLM、Gamma、Genspark、ChatGPT、Claudeのどれかを触ったことがある方
- 「もっといいツールがあるのでは」とツール探しのループに入ってしまっている方
AIでスライドを作ったら、微調整で結局2時間かかった話
先日、AI勉強会で登壇するにあたって、スライドを作っていました。
テーマは「資料作成 × AI」。最近のAIツールはどれも優秀で、スライド作成もかなり楽になった、ように見えます。NotebookLM、Gamma、Genspark、ChatGPT、Claude。選択肢は山ほどある。
なので、当然こう思いました。今回もAIに作らせればいいや、と。
プロンプトを投げて、スライドを一発生成する。出てきたものを見る。まあまあ整ってはいる。いるんだけど、微妙にズレている。言いたいことから少し外れている。細かい言い回しも自分の文体じゃない。
一枚ずつ直していきます。順番を入れ替えて、文言を書き直して、レイアウトを整えて。
気づいたら2時間が経っていました。
結局、ゼロから書いたのと同じ時間がかかっている。
これ、自分だけじゃないはずです。AIでスライドを作ったことがある人なら、似た感覚があるんじゃないかと思います。
「AIに作らせたんだけど、結局直してたら時間なくなった」 「微調整してるうちに、ゼロから書いた方が早かった気がしてきた」
なぜこうなるのか。
よくある反応:「もっといいツール使えばいいのでは」
この話をすると、だいたい返ってくる反応が決まっています。
「それは使ってるツールが悪いのでは」「NotebookLMの方がいいですよ」「最近はGensparkが熱いらしい」。情報感度が高い人ほど、この反応になる。新しいツールをキャッチアップして実際に試してみる、これ自体はすごく大事で、触らないと可能性も限界もわからないから、別に否定するつもりはないというかむしろ必要な態度だと思っています。
でも、実際に片っ端から試してみた人はたぶん気づいています。どのツールを使っても、だいたい同じ落とし穴にハマるんですよね。
NotebookLMで作っても、Gammaで作っても、Gensparkで作っても、ClaudeやChatGPTに対話で作らせても、一発目の出力は「まあまあ整ってはいるけど微妙にズレている」状態になる。そこから微調整が始まって、気づいたらゼロから書いたのと同じ時間が経っている。
ツールが変わっても起きることが同じなら、問題はツールじゃない。
この時点でようやく、自分がハマっているのはツールの問題じゃないかもしれない、という仮説が立ちます。でも多くの人はここで止まる。止まって、また次のツールを探しにいく。Xで「○○が最強」みたいなポストを見て、試して、微調整地獄にハマって、「これも違った」ってなる。無限ループです。
ここで一度立ち止まって、ツールじゃなくて自分の作業の方を見てみると、話が一段深くなります。
そもそも、自分は何に時間を使っているんだっけ、と。
本当のボトルネックは、作業じゃなくて言語化
自分のケースに戻って、2時間かけて何をしていたかを改めて見直してみると、やっていたことは順番を入れ替えたり、文言を書き直したり、「この表現違うな」と直したり、「このスライドいらないな」と削ったり、そういう細かい手直しの連続でした。
よく見るとこれは全部「言い直し」で、スライドを作る作業ではありません。自分が本当は何を言いたかったのか、どの順番で話すと伝わるのか、どの言葉を選ぶのかを延々と詰めている作業で、言ってしまえばずっと言語化をしていたことになります。
ここで、最初の仮説が間違っていたことに気づきました。
自分は「スライドを作る時間がない」のが問題だと思っていて、だからAIに作らせれば解決すると考えていたわけですが、実際には「何を話すか」がまだ固まっていないままAIにスライドを作らせていたので、そりゃズレます。自分でも固まっていないものをAIが正解の形で出してくるわけがないのに、AIに投げれば何とかなる気がしていたんですよね。
AIは自分の頭の中を読めないし、自分もそれはわかっているのに、それでも曖昧な指示で投げてしまう。出てきたものを見て「なんか違うな」と思いながら直していくうちに、ようやく「自分が言いたかったのはこれだったのか」と気づく、という流れを毎回やっていることになります。
つまり微調整している時間の正体は、AIに直されながら自分の思考を言語化している時間だった、ということになります。
順番が逆なんですよね。本来は先に言語化が終わっていて、その上で「これを形にして」とAIに渡すべきところを、多くの人は(自分もそうだったのですが)言語化が終わる前にAIに投げてしまう。「AIと一緒に考えれば、考えながら言語化できるでしょ」と思っているからで、確かにできるといえばできるんですが、ゼロから書いているのとほぼ同じ作業量になります。AIが生成したものを材料にしているだけで、言語化自体は結局自分がやっているからです。
ここまで来ると、やるべきことはシンプルに見えてきます。
言語化を先に終わらせる。生成はその後。
順番を組み替える:言語化→構成→指示書→生成
自分の場合、この順番でやり直すようにしたら変な違和感が混入したり、詰まったりすることがだいぶ減りました。
最初にやるのが、何を話すかの言語化です。AIに向かって話してもいいし、自分でメモに書き出してもいい。自分は大抵ClaudeかChatGPTを相手に、「今回はこういう人に、こういうことを伝えたい。でも自分でもまだ整理できていない」と雑に投げて、向こうから返ってきた論点を眺めながら「ああ、自分はこれが言いたかったのか」と詰めていきます。壁打ちですね。
大事なのは、この段階ではスライドを作らないことです。ここで形にするのは、あくまで言葉と論点の骨格だけになります。
言語化が終わったら構成に進みます。どういう順番で話せば伝わるのか、どこがメインでどこが付録なのか、セクションの切れ目はどこか、を文章で固めていきます。ここも本文ではなく、各セクションの「何を言うか」を一行ずつメモする程度で十分で、構成が決まって初めてスライドの全体像が見えてきます。
その次に、各ページの文言とレイアウト指示を書いた指示書を作ります。「このページはこういう構造」「この文言をこう置く」「この図はこういう意図」というのを、マークダウンか何かで人間が読める形で書いておく。ここまで書くと、生成AIに渡す素材がほぼ揃います。
生成はここで初めて走らせます。Genspark、NotebookLM、あるいはClaudeなどに頼んだコード生成(html、pptxgenjsなど)、何でもいいのですが、指示書を渡して形にしてもらう。ここまで前工程を詰めていれば、生成結果はかなり意図に近い状態で出てきますし、多少の微調整は当然入りますが、ゼロから書き直すような事態にはなりません。
この4ステップを通してみると、AIが活きるのは①の壁打ちと④の生成で、②と③は人間が手を動かす工程になります。生成AIを「作業代行ツール」としてしか見ていないと、このうち①と④だけを繋ぎ合わせた短絡経路で進めてしまい、結果として②と③を後ろの工程で無理やり回収することになる。これが微調整地獄の正体でした。
おまけ:用途別に道具を使い分ける
前の節の話を踏まえると、生成AIのツール選びは「何に一番時間を使うか」で変わります。
既存の資料をベースに要約や再構成をしたい場面なら、ソース指定で読ませられるNotebookLMが扱いやすいですし、プロンプト一発で叩き台をざっと出したいときはGensparkあたりの一発生成系が向いています。一方で、何を話すかがまだ固まっていない段階の壁打ちでは、対話の深さで差が出るのでClaudeかChatGPTを使うのが早いですし、ブランド統一された資料を量産する段階に入ると、pptxgenjsなどでコードを書いて自分のテンプレートを持つのが結局一番安定します。
どれが優れているという話ではなく、自分がどの工程で詰まっているかで答えが変わる、という話になります。
AIは生成機ではなく壁打ち相手
ここまでの話を振り返ると、AIで資料作成が楽にならなかった理由は、AIの性能でもツールの選び方でもなく、単に順番を間違えていただけでした。スライドを作る時間が足りないのだと思っていたのに、実際には何を話すかが固まっていなかった。作業を代行させるつもりでAIに投げていたのに、結局自分の頭の中を整理する作業が残っていて、その整理を直しながらやっていた、ということになります。
こう書くと当たり前のことなのですが、渦中にいるときは気づきにくいところでもあります。新しいツールが出てくるたびに「今度こそ楽になるのでは」と思って試してしまうし、出てくるアウトプットが綺麗だと、つい「ここから整えれば何とかなる」と手直しを始めてしまう。気づいたら2時間経っているという流れを何度か繰り返して、やっとツールを変えても何も解決していないことに気づく感じです。
ちなみに、先に言語化、といっても、自力で全部整理してから渡す必要はないです。むしろモヤモヤしたままの方が良くて、AIを相手に喋って引き出させる方が早いので、自分の場合は音声入力で垂れ流した雑な独り言をAIに渡して、そこから構造や対立軸を返してもらっています。このやり方は別の記事で書いているので、気になる方は考えをまとめる前に話し始めてしまう人がAIで武装すると?を覗いてみてください。
考えを引き出すのも形を作るのもAIに任せられるとなると、じゃあ人間の仕事は何なのかという話になりますが、まず大事なのは何を伝えたいのかというテーマ設定と方向性を自分の中で持っておくことです。そのうえで、AIが返してきたものに対して「これは違う」「ここは言いたいことと微妙にズレる」と判断するための審美眼と判断軸があって、違和感を覚えたときに「何がどう違うのか」を言葉にできる言語化力があって、最後に納得いくまで繰り返す執着力がある。壁打ち相手としてのAIと生成機としてのAIを工程ごとに使い分けながら、この辺りの方向性と判断と粘りを自分で持っておけば、そこそこ回っていく気がします。
資料作成に限らずですが、AIがうまく使えないと感じたときにいったん手を止めて、自分が何に時間を使っているのかを眺めてみると、意外と道具のせいではなかったことに気づけるかもしれません。
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