AI導入

中小企業がAIで成果を出すとはどういうことか。レベル表と3つの壁で現在地から解説

こんな方におすすめ

  • AIで何かやらないとまずい気はしているものの、何から手をつければいいか分からない中小企業の経営者
  • AI導入にいくらかかり、何が変わるのかのイメージが持てない方
  • 「AI人材がいないからうちには無理だ」と感じている方

この記事を読むと

Before:「AI活用」と聞いても、自社で何がどうなるのかイメージできない

After:自社の現在地がレベルで分かり、次の段階へ進むために何をして、いくらかかって、誰が必要かを自分の言葉で言える

「AIで成果を出す」の正体

いきなり結論ですが「AIで成果を出す」とは、いまかかっているお金と時間が減るか、いままで出せなかった質と量の仕事が出せるようになることだと考えています。売上がひとりでに伸びるといったマジカルな話では決してないですが、まずコストの観点から眼に見える成果が出ることが多いと思います。

例えば、毎年支払っている定型作業の外注費だったり、月末に丸3日つぶれる集計作業のように、すでに発生しているコストの置き換えから始めるのが現実的です。人手が足りず断っていた仕事を受けられるようになる、分析の量と角度が増えて判断の質が変わる、といった付加価値側の成果は、その先に続いてきます。

「チャッピー(ChatGPT)はたまに触るんだけど、問答して終わりでいいのかが分からない。やらないとな、という話は仲間内でもするんだけど、結局何から手をつけるのか、いくらかかるのか、どんなスキルの人が要るのかが全然分からない」

経営者の集まりに顔を出すと、このようなお声を頻繁に耳にします。

こう感じている経営者は珍しくないはずで、世の中のXや解説記事はツール名と活用例の羅列が中心で、読み終えても「うちの会社では何がどうなるのか」には答えてくれません。ツールの知識より先に必要なのは、自社がいまどの段階にいるのかという現在地の把握です。

AI活用レベル表「あなたの会社はいまどこか」

レベル会社の状態費用感必要な人材
0業務でAIを使っている人がいない0円
1経営者や一部の社員がChatGPTなどに質問している月0〜3千円/人誰でも始められます。経営者自身が最速です
2ルール集や過去データなど、自社の情報を渡した上で仕事をさせている月数千円/人業務を言語化できる人。AIスキルよりも業務知識です
3AIが会計ソフトや自社データを直接操作して業務をこなしている構築費+月数千〜数万円の従量課金技術者が必要ですが、外部で構いません。社内には窓口役が1人いれば足ります
4決まった業務が、人が起動しなくても定期的・自動的に回っている上記+保守費保守と不具合対応の体制(外部伴走で可)
5業務と事業の数字が可視化され、AIの仕事ぶりも見えている会社による数字を見て決められる経営者自身
MAX人の仕事が確認と意思決定だけになっている

自社がどこに当てはまるか、表を見ながら考えてみてください。**ほとんどの会社はレベル0か1です。**恥じる必要はまったくありません。大企業でも1で止まっている部署はいくらでもあります。

その上でどこを目指すかと聞かれたら、私はいつも同じ答えを返しています。**まず目指すべきはレベル2です。**レベル2に上がると、AIの答えが「どこかで読んだような一般論」から「うちの会社の答え」に変わります。多くの経営者がAIに失望するのは、レベル1の状態のまま仕事の答えを求めてしまうからだと考えています。

正直に書くと、レベル5から先まで来ている中小企業には、私もまだほとんど出会っていません。急ぐ場所でもないと思います。それより手前に、越えなければならない壁が3枚あると考えます。

壁①(レベル0→1):心理の壁

最初の壁は心理の壁です。触ったことのないものは怖いですし、何に使えるのか分からないものに時間を割く決断はできません。ここでつまずく典型が、部下への丸投げです。「AIをちょっと調べておいて」と指示された若手は、活用例をまとめた資料を作って報告して終わります。会社は何も変わりません。

乗り越え方は、経営者が自分のアカウントを作り、1〜2週間だけ自分の仕事に使ってみることです。慣れるまでは、調べ物より判断の相談に寄せてみてください。取引先から来た見積もりが妥当かどうか、応募の来ない求人票のどこが悪いのか、銀行に出す文章の下書きをどう直すか。こうした相談を数回投げてみると、「この程度は任せられる」「ここから先は無理だ」という相場観が自分の中にできてきます。相場観を持つ人が社内に1人いるかどうかが、レベル0と1の分かれ目なのです。

費用は月3千円ほどしかかかりません。

壁②(レベル1→2):情報の壁

レベル1で止まる会社には共通点があります。AIに自社の情報を渡すという発想そのものがないのです。渡していないのですから、返ってくる答えが一般論なのは当然です。

「うちには渡せるような文書なんてない」と言われることもありますが、たいていの場合、探すと出てきます。ベテランが後輩に配っている手順メモ、10年分の見積書や報告書、朝礼で使っている注意事項の張り紙まで、会社が回っている以上、業務の知識はどこかに必ず形として残っているものです。新しく書き起こす必要はありません。すでにあるものを集めてAIに読ませるだけで、答えの質は別物になります。

当社の実例として、商談の録音をNotebookLMで営業チームの資産に変えた方法を公開しています。録音は「すでにあるのに使われていない自社情報」の典型例だからです。

この段階で活躍するのは、業務を言葉にできる人です。AIの知識は問いません。長くいるベテランほど向いています。

壁③(レベル2→3):費用と技術の壁

3枚の壁のうち、いちばん高いのがここです。費用の構造が変わることと、技術者なしでは越えられないこと、理由はこの2つに尽きます。

月に数千円のチャット課金で済んでいた世界から、最初に払う構築費と、使った分だけ請求される従量課金の世界へ入ることになります。こう書くと身構える方が多いのですが、比べる相手は「無料だった頃の自分」ではなく、いま外注費や残業代として現に出ていっているお金で、その2つを並べた瞬間に、判断は思いのほか簡単になります。比べる土俵さえ合えば、怖い話ではありません。

肝心の構築費は、正直に言うとピンキリです。何千・百万円かかる規模の話もあれば、数十万円で十分やれる業務もあります。金額を分けるのは業務の複雑さと求める精度なので、「うちのこの業務ならいくらか」は見積もりで確かめてから判断すれば足りるのです。

費用と並ぶもう一つの誤解が、技術者にまつわるものです。AI人材の採用は、少なくとも最初の一歩には要りません。フルタイムでAIエンジニアを雇うのは現実的でありませんし、雇わなくても外部と組めば足りることの方が十分です。社内に必要なのは、業務をよく知っていて外部との窓口に立てる人が1人だけです。実際、当社がAIに会計ソフトを操作させて法人決算を8時間で終えた記録でも、作業側に求められたのは、会計の深い専門知識よりむしろ業務の流れを順に説明できることでした。

ありがちな失敗事例にも触れておくと、最初から全部の業務を対象にしようとして検証だけで息切れするパターンがほとんどです。対象は、毎月お金か時間が確実に漏れている業務を1つだけに絞り、現状の実費と見積もりを並べて判断してください。1業務で成果の実感がつかめれば、2つ目からは社内の空気も変わっているでしょう。

レベル4から先の景色

壁③を越えた業務は、定期実行の設定を足すだけで、人が起動しなくても月初にレポートが届き精算書ができあがっている状態、つまりレベル4へ近づいていきます。もう人の手はほとんどかかりません。さらに先のレベル5では、AIがこなした仕事も含めて事業の数字が一枚で見えるようになり、経営者の仕事は確認と意思決定に寄っていきます。

レベル4や5と聞くと、遠い話に感じられるかもしれません。それでいいと考えています。レベル2まで上がった会社は、3から先の事例を自分ごととして読めるようになるので、景色は歩きながら順に見えてくるものです。

まとめ

明日と言わず今日できる一手は、経営者自身がAIのアカウントを作り、2週間、自分の判断業務の相談相手にしてみることです。月3千円で、壁①はそれだけで越えられます。並行して、社内にすでにある文書を3つ思い浮かべておくと、壁②の助走になります。

どの業務から手をつけるべきかの選び方や、効率化で浮いた人と時間をどこへ振り向けるか、そもそもAIで付加価値は上がるのかという論点は、それぞれ1本の記事になる大きさなので、稿を改めて正直に書く予定です。自社のどの業務が対象になりそうか、いま知りたい方はご相談ください。30分で棚卸しをお手伝いします。

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