AI-DX

なぜAIによる業務改善は現場に抵抗されるのか

なぜAIによる業務改善は現場に抵抗されるのか

こんな方におすすめ

  • AIで業務を効率化したいのに、現場がなかなか乗ってこない
  • ロジカルに正しいはずの改善が、なぜか社内で歓迎されない
  • AIツールを導入しても定着せず、元のやり方に戻ってしまう

この記事を読むと

Before:AIで効率化すれば喜ばれるはずなのに、現場から「ありがた迷惑」扱いされている

After:現場がAI導入に抵抗する構造的な理由が分かり、感情を踏まえた進め方を設計できるようになる

AI導入が進まない「よくある原因」は本当に原因か

「AIを導入したいのに現場が動かない」。こういう相談をいただくことがあります。

原因を調べると、だいたい出てくるのは「リテラシー不足」「トップの関与が足りない」「目標が曖昧」あたりがよくあるのではないでしょうか。

もちろんそれも重要な要素なのですが、自分がクライアント企業のAI導入を支援する中で感じるのは、こういう教科書的な原因だけでは説明がつかないケースが結構あるということです。

トップや、AIを自力で既に活用している社内の旗振り役のモチベーションが高い、ツールも選定した、研修もやった。いざ蓋を開けると現場が意外にスルーしている…。

こういう時に起きているのは、スキルや体制の問題ではなく、もっと手前にある「感情」の問題だったりします。もう少し踏み込んで言うと、「効率化されたくない」という、一見すると不合理に見える気持ちが、実はかなり合理的な理由に基づいているケースが散見されます。

「効率化されたくない」という合理性

「楽になるんだから嬉しいはずだ」

効率化を進める側はそう思いますよね。しかし現場で実際に作業をしている人の立場で考えると、話はそう単純じゃないのです。

たとえば、毎月の経理処理をExcelで手作業でやっている人がいるとします。時間はかかるし、正直めんどくさい。でも、その作業を何年も続けてきた人にとっては「自分がこれを回しているんだ」という実感がある。それをAIや何かしらの効率化技術を使ったワークフローによって一気に効率化されると、便利になる反面、自分の存在意義が削られるような感覚が生まれることがあります。

もう1つ厄介なのが、「浮いた時間」の使われ方の問題です。AIで作業を効率化した結果、30分浮いたとしますよね。その30分で好きなことができるなら嬉しいですが、実際には別の仕事が乗ってくるだけだったりする。だったら手に馴染んでいるやり方でできる今の作業をやっといた方が楽だな、という判断が働くのは、むしろ合理的ですよね。

つまり、効率化の受益者が本人じゃないということです。楽になった分の時間を会社が回収する構造になっている限り、現場にとってAI導入は「自分のための改善」にならない。ここを見ないままAIを入れても、定着しないのは当然だと思います。

AI推進する側が「敵」になるメカニズム

もう1つ、AI導入で起きやすい問題があります。推進する側が、現場から「敵」として認識されてしまうことです。

これ、本人からすると理不尽なんですよね。良かれと思ってやっているし、実際にみんなが楽になるはずのことをやっている。なのに「あの人がまた何かやろうとしてる」みたいな空気になる。

なぜこうなるかというと、推進する側がいきなり全部変えようとするからです。自分ははこれを「なだれ型」と呼んでいるんですが、片っ端からAI化して「もうこんなの手作業でやらなくていいですよ」と言ってしまうと、現場からすると自分たちの仕事が否定されたように感じてしまいます。

しかも、こういう動きを現場と十分にコミュニケーションを取らずに進めると、「飛び越えられた」という印象を持たれることがあります。自分たちの頭越しに勝手に業務が変えられた、という感覚です。こうなると、内容が正しいかどうかに関係なく、心理的に受け入れたくなくなります。

過去に自分自身がベンチャー企業で働いていた時も、この問題を経験しています。全員の顔が見えている小さな組織のうちはなだれ型で進めてもうまくいく一方で、組織が大きくなって知らない人が増えてくると、途端に「あのひと誰?なんか勝手に変えようとしてくる不穏な人物…」みたいなことが起きます。

社内において与党のつもりなのに、野党に見えてしまう。この構造に気づかないまま正論を押し通すと、改善どころか社内の信頼関係が壊れかねません。

感情に寄り添うAI導入の進め方

ではどうすればいいのか。

クライアント企業のAI導入を支援する中で実践しているアプローチを、いくつか挙げてみます。

なだれのようにやらない

AIで全部置き換えられるとしても、一気にやらないことです。現場の人たちが「ここが面倒なんだよね」と言っている部分から手をつける。ワークフロー全体を壊すんじゃなくて、既存の流れの中の一部を楽にするところから始めると、心理的なハードルがだいぶ下がります。

「仲間」であることを先に示す

AI導入を進める人が最初にやるべきは、ツールの説明でも業務分析でもなくて、「この人は味方だ」と現場に思ってもらうことです。いきなり改善提案から入るのではなく、まず現場が何に困っているかを聞く。その困りごとに共感を示す。この順番を間違えると、どんなに優れたソリューションを持ってきても受け入れてもらえません。

組織がイエスマンだらけになるメカニズムとも似ていて、上から降ってくる変革に対して現場は基本的に身構えます。だからこそ「あなたの仕事を奪いに来たわけじゃない」というメッセージを、態度で示す必要があるんです。

▶ 関連記事

既存のワークフローの中に入る

AIを使うんだったら今の業務のやり方自体をゼロペースで見直した方ががいいよね、という場面は実際には多いです。しかし気を付けたいのは、いきなりそこに踏み込むと現場がパンクします。まず今のワークフローをそのまま受け入れて、その中で一番効果が出るポイントにAIを差し込む。全体を再設計するのは、信頼関係ができてからで十分です。

AIネイティブな組織を目指すのであればなおさら、急がば回れ、です。透明性を担保しながら徐々に変えていくアプローチが、結果的には速いと感じています。

▶ 関連記事:AIネイティブな組織に透明性が必要なのはなぜ

まとめ

AI導入が現場に抵抗される原因は、リテラシーでもツールの出来でもなくて、感情の問題であることが多いです。

ポイントを整理すると、こんな感じですね。

  • 「効率化されたくない」には合理的な理由がある。浮いた時間の使われ方が本人にとって得じゃないなら、変わりたくないのは自然なこと
  • 推進する側がなだれのように変えようとすると、「敵」として認識されてしまう
  • 先にやるべきはツール導入ではなく、仲間であることを示すコミュニケーション
  • 既存のワークフローの中に入ってから、段階的に変えていく

正しさだけでは人は動きません。パトスというか、人の感情に寄り添いながら、徐々に変えていく。遠回りに見えて、これが一番確実な進め方だと思っています。


関連記事

Kumonoに相談するhttps://kumono-inc.com/contact

Newsletter

事業を伸ばすための顧客理解、AI活用や組織実装について、現場で得た知見を不定期でお届けします。

お問い合わせ

Kumonoでは、スタートアップの支援に関するご相談を承っております。
お気軽にお問い合わせください。

無料相談を予約する