こんな方におすすめ

  • サブスクやリピート型事業で、継続率・解約率を改善したい事業責任者・PM・マーケターの方
  • 継続率を「全体の平均値」でしか追えておらず、数字が動いた理由を説明できない方
  • コホート表を作ってはみたものの、そこから施策につながっていない方

この記事を読むと

Before:継続率を月次の平均で見ていて、上がった・下がったの理由が説明できない。コホート分析という言葉は知っているが、自社でどう使えばいいかわからない。

After:コホート表の作り方と読み方がわかり、「どの顧客群の・どの時期」に手を打つべきかを特定できる。数字で当たりをつけてから顧客に話を聞きにいく、という改善の型が手に入る。

コホート分析とは「平均値が隠してしまうもの」を見るための分析です

コホート分析とは、同じ時期にサービスを使い始めた顧客をひとつのグループ(コホート)として束ね、そのグループごとに継続率や利用率が時間とともにどう変化するかを追う分析手法です。たとえば「2026年1月に課金を始めた人たち」「2月に始めた人たち」をそれぞれ別の集団として扱い、1ヶ月後・2ヶ月後・3ヶ月後に何%が残っているかを並べて見ていきます。

なぜわざわざグループに分けるのか。理由はシンプルで、全体の平均値は平気で嘘をつくからです。

たとえば、ある月の「全顧客の継続率」が先月より上がったとします。これは喜んでいい数字でしょうか。実は判断できません。新規顧客が大量に入ってきた月は、まだ解約しようがない人たちが分母に増えるので、サービスが何も変わっていなくても平均継続率は上がって見えます。逆に、獲得を絞った月は古参比率が上がって数字が動きます。つまり平均値では、「サービスが良くなったのか」「顧客の構成が変わっただけなのか」を区別できないんですね。

コホート表の作り方。必要なデータは実は3つだけです

コホート分析と聞くと専用ツールが必要に思えますが、最低限必要なデータは次の3つです。

  • 顧客を識別するID
  • その顧客の「開始日」(初回課金日、初回購入日など)
  • 各月(または各週)にその顧客が「継続していたか」を判定できるデータ(課金記録、利用ログなど)

この3つが揃えば、スプレッドシートのピボットテーブルでも、SQLでも、GA4の標準機能でも作れます。行に「開始月」、列に「開始からの経過月数」、セルの値に「残存率(その時点で継続している人の割合)」を置けば、見慣れた階段状のコホート表になります。

作るうえで最初に決めるべきは、ツールよりも定義です。具体的には次の2点を先に固めてください。

「開始」をどこに置くか。 無料登録日なのか、初回課金日なのか。両者の間に体験期間があるサービスでは、どちらを起点にするかで表の意味がまったく変わります。継続課金の改善が目的なら初回課金日、オンボーディングの改善が目的なら登録日、というように、見たい問いに合わせて決めます。

「継続」をどう判定するか。 課金が続いていれば継続なのか、ログインや利用があって初めて継続なのか。課金は続いているが使っていない、いわゆる「幽霊会員」が多い事業では、課金ベースと利用ベースの2枚を持っておくと、解約の予兆が利用側に先に出ることが見えてきます。

ここが曖昧なまま表を作ると、後から「この数字、何の数字だっけ」となって誰も見なくなります。逆に言えば、定義さえ固まればコホート表自体は半日もあれば作れます。

コホート表の読み方。「縦」「横」「施策前後」の3方向で見ます

表を作ること自体より大事なのが読み方です。私たちが支援先で実際にやっている見方を、3つの方向に分けて紹介します。

1. 横に読む:どこで落ちているかを見つける。 ひとつのコホートを左から右へ追うと、残存率がガクッと落ちる場所が見つかります。初月から2ヶ月目にかけて大きく落ちるなら、オンボーディングや初期体験の問題である可能性が高いです。半年あたりでじわじわ削れていくなら、使い慣れたあとの飽きや、価値を感じる場面の減少を疑います。落ちる場所によって、打つべき施策の種類がまったく違うので、まずここを特定します。

2. 縦に読む:コホート間の差を見つける。 「開始から3ヶ月時点の残存率」を、1月開始・2月開始・3月開始…と縦に比べます。新しいコホートほど良くなっていれば、その間に入れたプロダクト改善や獲得チャネルの変更が効いている可能性があります。逆に、ある月から急に悪化していたら、その時期に何を変えたかを遡ります。広告チャネルを広げて獲得数を伸ばした月のコホートだけ継続が悪い、というのは本当によくあるパターンで、「獲得の質」の問題が継続率の顔をして現れてきます。

3. 施策前後で読む:効果検証に使う。 オンボーディング改善や料金プラン変更など、何か施策を打ったら、その前後の開始コホート同士を比較します。全体平均の前後比較と違って、顧客構成の変化に汚されにくいので、施策の効果をかなり素直に評価できます。

数字でわかるのは「どこで落ちたか」まで。理由は顧客に聞きにいきます

ここがこの記事でいちばん伝えたいことです。コホート分析でわかるのは「どのコホートが・いつ落ちたか」という場所までで、「なぜ落ちたか」という理由はデータの中にありません。

なので私たちは、コホート分析とN1インタビューを必ずセットで回しています。順番としては、まずコホート表で落ちている場所と顧客群に当たりをつけて、その条件に合う顧客(たとえば「3ヶ月目で解約した、◯◯チャネル経由のユーザー」)に絞ってインタビューを依頼する、という流れです。現在ご支援しているサブスク事業でも、SQLでコホートを切って怪しい場所を特定してから、その層のユーザーに話を聞きにいく、という往復を毎月のように回しています。

逆の順番、つまり先にインタビューをして「なんとなく全体の声」を集めると、声の大きい人や直近の解約者に引っ張られて、事業インパクトの小さい場所に施策を打ってしまいがちです。**定量で場所を絞り、定性で理由を掴む。**この順番が、遠回りに見えていちばん速いと感じています。

インタビューの具体的な進め方は、N1インタビューの記事で詳しく書いているので、そちらを参考にしてください。

コホート分析でよくあるつまずき3つ

最後に、支援の現場でよく見るつまずきを3つ挙げておきます。

切りすぎてnが小さくなる。

開始月×チャネル×プラン×年代…と軸を増やすほど、1セルあたりの人数が数人になり、ノイズだらけの表になります。最初は「開始月だけ」で全体の形を掴み、仮説ができてから1軸ずつ足すのがおすすめです。月間の新規が数百人規模の事業なら、セグメントは2〜3個までに抑えたほうが判断を誤りません。

直近のコホートを深読みする。

表の右下、つまり最近始まったコホートの直近月は、まだ観測期間が短くデータも揺れます。「先月開始コホートの1ヶ月目残存が悪い!」と騒ぐ前に、過去コホートの同時点と比べて誤差の範囲かどうかを見る癖をつけてください。

見て満足して、打ち手につながらない。

これが実はいちばん多いつまずきです。コホート表は眺めているだけだと「ふーん」で終わります。対策として、継続率など主要な指標に課題がある状態で表を見る場では必ず「次に誰に・何を聞くか/どの施策を検証するか」を1つ決めて終える、というルールにすることをおすすめします。

まとめ

コホート分析は、平均値に隠れた「どの顧客が・いつ離れるか」を特定するための、継続率改善の出発点になる分析です。難しいツールは必要なく、開始日と継続判定のデータがあれば今日から作れます。大事なのは、定義を先に固めること、横・縦・施策前後の3方向で読むこと、そして数字で場所を絞ったら顧客に理由を聞きにいくことです。

Kumonoでは、コホート分析の設計からN1インタビュー、施策への落とし込みまでを一気通貫でご支援しています。継続率まわりの分析や顧客理解の知見は、メルマガでも不定期にお届けしています。サービスページもご興味がある方はぜひご覧ください。

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