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顧客理解が事業成長の起点になる理由|獲得・継続・拡大の全フェーズで効く考え方と実践

顧客理解が事業成長の起点になる理由|獲得・継続・拡大の全フェーズで効く考え方と実践

こんな方におすすめ

  • 施策を増やしているのに売上が伸び悩んでいる
  • 「顧客理解が大事」とは分かっているが、何をどうすればいいか整理できていない
  • マーケや調査担当だけでなく、事業全体で顧客理解を活かしたい

この記事を読むと

Before:顧客理解はリサーチ部門の仕事だと思っている。ペルソナやアンケートをやったことはあるが、施策に活かせた実感がない

After:顧客理解が獲得・継続・拡大の全フェーズに影響することが分かり、自社のどこから手をつけるべきかが見えてくる

顧客理解とは何か

「顧客理解が大事」という話は、どの会社でも一度は出たことがあるんじゃないでしょうか。ペルソナを作った、インタビューをやった、アンケートを取った。でも正直、それが施策にちゃんと活きた実感はあまりない、という声もよく聞きます。

私たちKumonoは、オンラインフィットネスや登山アプリ、発達支援サービスなど、サブスクリプション型の事業を中心に顧客理解の実務を重ねてきました。累計で数百人を超えるN1インタビューとデータ分析を組み合わせてきた中で、繰り返し感じることがあります。顧客理解がうまくいかないのは、やり方の問題ではなく、そもそもの捉え方がズレていることが多いんです。

顧客理解とは、顧客が何を求めているか・なぜそれを選んだのか・いつ・どんな状況で使っているのかを把握することです。属性や購買履歴を知ることではなく、行動の背景にある文脈や動機まで掴みにいくことを指します。

ただ、この言葉には誤解がつきやすいです。マーケや調査担当の仕事と捉えられていることが多いのですが、顧客理解は部門の仕事ではなく、獲得・継続・拡大のどのフェーズでも事業の意思決定に直結します。担当者が調査して終わり、では機能しません。

もうひとつ言うと、ペルソナを作ること=顧客理解という理解も危ういです。ペルソナは仮説の整理には使えますが、それ自体は顧客の声ではありません。実際の顧客が何を言ったか・どう動いたかのデータが伴ってはじめて意味を持ちます。

施策を増やしても伸びないのはなぜか

事業が伸び悩み始めると、施策を増やしたくなります。新しいチャネルを試す、コンテンツの本数を増やす、キャンペーンを打つ。やること自体は間違っていないのですが、多くの場合それより先にやるべきことが抜けています。

顧客が自社を選んでいる理由、あるいは離れていく理由を、ちゃんと掴めているかどうかです。

これが曖昧なまま施策を積み上げると、手応えのないまま打ち手だけが増えていきます。なぜ効かないのか分からない、という状態がそれです。Kumonoがクライアントの事業を見るとき、施策の数と顧客理解の深さが反比例していることは珍しくありません。

たとえば、解約理由のアンケートで一番多かった回答が料金が高いだったので値下げを検討していた、という相談を受けたことがあります。でもインタビューで掘り下げてみると、料金に見合う価値を感じられていなかっただけで、価格そのものが問題ではなかった。値下げしても解約は止まらなかったはずです。アンケートの選択肢は、回答者にとって一番選びやすいものが選ばれるだけで、本当の理由とは限りません。

顧客が「なぜ選んだか」を知っている会社は、同じことをもっとうまくやる方向に集中できます。顧客が「なぜ離れたか」を知っている会社は、穴を塞ぐ場所が分かります。施策の量より、この解像度の方が成果に効くことが多いです。

この点については「施策を10倍に増やしても売上が伸びなくなった時に考えること」でも詳しく書いているので、あわせて読んでみてください。

顧客理解が、獲得・継続・拡大の全部で効く

顧客理解というと、どうしても新規獲得のためのリサーチというイメージがあります。でも実際には、事業のどのフェーズでも意思決定の質を左右します。

獲得フェーズでは、初めて買ってもらう動機を掴めているかどうかが全部です。なんとなく良さそうだったという感想ではなく、どんな状況で・何がきっかけで・どこで決め手になったかを知っていれば、広告もLPも刺さる場所に当てられます。逆に言うと、ここが曖昧なままCPA改善を追いかけても、数字がブレ続けます。

継続フェーズで特によく起きるのが、自分たちが売っているつもりの価値と、顧客が実際に感じている価値のズレです。

例として、あるB2B SaaSの支援をしていたとき、サービス側は作業が楽になるを主軸に訴求していました。

作業時間80%削減、最短5秒で登録完了。訴求としては分かりやすいですよね。ところがインタビューをしてみると、顧客が本当に喜んでいたのは全部記録に残るという点でした。ある企業の担当者は、問い合わせが来たときに自分で追跡できるから差し込みの対応業務がなくなったと言い、別の企業では、証跡が残ることでクレーム対応時に事実確認ができる安心感を挙げていました。

フロー改善ではなく、ストックの蓄積に価値を感じていたんです。作ってる側には当たり前の機能でも、顧客にとっては今まで何の記録もなかった世界からの劇的な変化だった。このズレに気づかないまま継続施策を打っても、的外れになります。このギャップが見えたことで、訴求の切り口からオンボーディングの設計まで、見直すべきポイントが一気に具体的になりました。

解約率の改善アプローチについては「解約率を本気で下げてLTVを上げたくなった際に知るべき3つの視点」もあわせてお読みください。

拡大フェーズでは、どうすれば無料会員が課金してくれるかという問いを立てることが多いです。でもこの問いの立て方が、すでに危ういです。

無料でいいという言葉は全員が言うけれど、その理由は全員違います。今の使い方では有料機能が必要ない人、有料機能の価値をそもそも知らない人、誰かのアカウントに乗っかれているから自分では払っていない人。これを一括りに無料会員として同じ施策を打っても、ほとんど響きません。

逆に、理由ごとに分けて考えると打ち手が変わります。価値を知らない人には機能を伝える訴求が効く。今のスタイルでは必要ない人には、使い方が変わるタイミングに合わせてアプローチする方が動いてもらいやすい。顧客の文脈を掴んでいれば、誰に・何を・いつが見えてくるんです。

3つのフェーズに共通しているのは、データを持っているかどうかではなく、顧客の文脈を掴んでいるかどうかだということです。

量が出るようになったからこそ、何を出すかが全部になった

AIを使えば、コンテンツも広告文も施策のアイデアも、以前より速く・大量に作れるようになりました。これ自体はいいことです。ただ、速く走れるようになったことと、正しい方向に走っていることは別の話です。

顧客理解が浅いまま量産すると、的外れな施策が高速で積み上がっていきます。なんかコンテンツ増えてるけど問い合わせが来ないという状態がそれです。AIは何を作るかを決めてくれません。判断の大元は、結局のところ顧客への解像度です。

逆に言うと、顧客理解がちゃんとできている会社はAIの恩恵をそのまま受けられます。誰の・どんな課題に・どう刺さるかが分かっていれば、AIはその精度を落とさずに速度だけ上げてくれます。

生成できる量が増えた分、何を生成するかの判断が以前より重くなった、というのが実感としてあります。ツールが進化するほど、入力側の質が問われる構造になっています。

KumonoがやっているN1×データの往復

顧客理解の方法論として、Kumonoが一貫してやっているのがN1インタビューとデータ分析を行き来するアプローチです。

データだけ見ていると何が起きているかは分かりますが、なぜそうなっているかが分かりません。解約率が上がっている、継続率が落ちている、というのはデータで見えます。でもその背景にある顧客の文脈は、データからは出てきません。

だからインタビューをするのですが、インタビューだけだとこの人だけの話かもしれないという不安が残ります。1人の声が全体を代表しているかどうか、データで確かめないと施策に踏み切れないことも多いです。

この2つを往復することで、仮説の精度が上がっていきます。

先ほどのB2B SaaSの例でいえば、データ上では特定の機能の利用頻度が高いユーザーほど継続率が高い、という相関が見えていました。ただ、それだけだとその機能を全員に使わせればいいのか、元々ロイヤルティの高い人がたまたま使っているだけなのか判断がつきません。そこでインタビューで実際の利用場面を聞いていくと、その機能を使っている人たちは業務の中で記録を振り返る習慣があり、蓄積されたデータを日常的に参照していることが分かりました。つまり、機能そのものが継続の原因というより、データがストックとして活きる使い方をしている人が継続しやすいという構造だった。データだけ見ていたらこの機能を推せばいいで終わっていたところを、インタビューで因果の構造まで掴めたわけです。

もうひとつ、インタビューのやり方についても触れておきます。顧客インタビューで陥りやすいのが、なぜ使い続けているんですかとストレートに聞いてしまうことです。聞かれた側は、その場でもっともらしい理由を作ってしまいます。私たちが実践しているのは、理由ではなく事実を聞くやり方です。いつ使っているか、どんな場面で開くか、最後に使ったのはいつか。こうした具体的な状況を聞いていくと、本人も意識していなかった利用動機が浮かび上がってきます。

SOELUのプロジェクトでも、YAMAPの新サービス開発でも、このアプローチが起点になっていました。詳しくは事例記事をご覧ください。

N1インタビューの具体的なやり方については「N1インタビューとは?やり方から活用まで事業会社の実践視点で解説」で詳しく書いています。

どこから始めるか

ここまでお読みいただいた方は、「顧客理解が大事なのは分かった。でも何から手をつければいいか」という気持ちになってくると思います。

まずデータを見るか、まずインタビューをするかは、自社の状況によって変わります。ひとつの判断軸として、仮説があるかどうかで考えてみてください。

解約が増えている気がするけど理由が分からないという状態なら、まずデータで何が起きているかを確認する方が先です。動きの全体像が見えてから、インタビューで理由を掘りにいく方が話を聞く解像度も上がります。

逆にデータは見ているけど打ち手が出てこないという状態なら、インタビューから入る方が早いです。数字の背景にある文脈は、顧客に直接聞く以外で掴む方法がありません。

どちらにせよ、最初から大掛かりにやる必要はないです。インタビューは5〜10人から始めれば十分なことが多いですし、データも全部分析しようとせず、一番気になる指標ひとつから入ればいいです。小さく始めて、往復しながら解像度を上げていくのが現実的なやり方です。

顧客インサイトの見つけ方については「顧客インサイトとは?潜在ニーズとの違い・見つけ方・活用事例を完全解説」もあわせて読んでみてください。

まとめ

顧客理解は、マーケ部門だけの仕事でも、ペルソナを作ることでもありません。獲得・継続・拡大のどのフェーズでも、意思決定の質を左右するものです。

施策が増えても伸びないとき、AIで量産しても問い合わせが来ないとき、その手前に顧客の文脈を掴めているかという問いがあることが多いです。

やり方はシンプルで、データで何が起きているかを見て、インタビューでなぜそうなっているかを掘る。この往復を小さく始めるだけで、施策の打ち方が変わってきます。

どこから手をつければいいか迷っている場合は、お気軽にご相談ください。

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