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デプスインタビューとは?自社でやりきるための設計・質問・分析の実践ガイド

デプスインタビューとは?自社でやりきるための設計・質問・分析の実践ガイド

こんな方におすすめ

  • 定量データだけでは顧客の行動理由が見えないと感じている事業責任者
  • デプスインタビューを外注せず自社でやりたいが進め方が分からない方
  • インタビューはしたが、示唆が出せずに終わった経験がある方

この記事を読むと

Before:デプスインタビューの概要は分かるが、「具体的に何を聞けば?」「分析ってどうやる?」で止まっている

After:質問設計から分析・施策接続までの流れが分かり、自社で1本目のデプスインタビューを回せる状態になる

デプスインタビューとは何か

デプスインタビューは、インタビュアーと対象者が1対1で対話する定性調査の手法です。1回あたり60〜90分ほどかけて、行動の背景にある動機や文脈を深掘りしていきます。「デプス(Depth)」は「深さ」という意味で、表面的な回答ではなく、相手の考えや感情の奥にあるものに辿り着くことを目的としています。

私たちKumonoは、事業会社のグロース支援を専門とする会社です。顧客理解を起点に施策設計・実行まで一気通貫で支援しており、日常的にインタビューを事業会社の現場で実施しています。この記事では、その実務経験をもとに、自社でデプスインタビューをやりきるための設計・質問・分析の流れを解説していきます。

グループインタビュー(FGI)との違い

デプスインタビューと比較されやすいのが、グループインタビュー(FGI:Focus Group Interview)です。

デプスインタビュー グループインタビュー 人数 1対1 4〜6名 + モデレーター 時間 60〜90分 90〜120分 深さ 個人の動機・文脈を深掘りできる 広く意見を集められるが、個人の深掘りは難しい 本音の出やすさ 他者の目がなく、話しやすい 同調圧力や見栄が入りやすい 向いているテーマ 解約理由、購買動機、センシティブな話題 アイデア出し、コンセプト評価、反応の幅を見たいとき

ポイントは「どちらが優れているか」ではなく、知りたいことに合わせて使い分けることです。「なぜその行動をしたのか」を一人ひとり深く聞きたいならデプスインタビュー、「どんな反応のバリエーションがあるか」を効率的に集めたいならグループインタビューが向いています。

N1インタビューとの関係

「N1インタビュー」と「デプスインタビュー」は、実務上ほぼ同じものを指していることが多いです。N1インタビューは「たった1人の顧客を深く理解する」という考え方に重点を置いた呼び方で、デプスインタビューは調査手法としての呼び方です。

事業会社の文脈では「N1インタビュー」、リサーチ会社の文脈では「デプスインタビュー」と呼ばれることが多い印象です。やっていることは基本的に同じで、1対1で深く聞くインタビューです。N1インタビューの具体的な進め方はこちらの記事で詳しくまとめています。

いつ使うべきか

「とりあえずユーザーの声を聞こう」でデプスインタビューを始めると、たいてい空振りに終わってしまいがちです。デプスインタビューが力を発揮するのは、「数字では見えているけど理由が結局よく分かっていない」という場面です。

デプスインタビューが効くシーン

たとえばこんな状況に心当たりはないでしょうか。

解約率の数字は見えているが、打ち手が出てこない

アンケートで「使わなくなった」と回答されても、それだけでは何を改善すればいいか分かりません。解約に至るまでの行動の流れや、「使わなくなった」の裏にある文脈を一人ひとり聞くことで、初めて具体的な手が打てるようになります。解約理由の深掘りにインタビューがどう効くかは、こちらの記事でも触れています。

新規獲得のCPAが悪化しているが、原因が特定できない

初回購入の動機は人によってさまざまでその多様さは、大抵事業者の予想を超えてきます。広告のどの要素が刺さったのか、何と比較検討したのか、最後の一押しは何だったのか。定量データでは見えないこうした文脈を掴むには、1対1で聞くことが急がば回れにつながります。

サービスの利用文脈を把握したい

「いつ・どこで・どんな状況で使っているか」は、アクセスログだけでは分かりません。通勤中にスマホで使っているのか、デスクでじっくり使っているのかで、UIの設計方針はまったく変わります。

定量調査との使い分け

デプスインタビューは定量調査の代わりではありません。むしろ、定量調査と組み合わせることで真価を発揮します。

定量調査で「何が起きているか」を掴み、デプスインタビューで「なぜ起きているか」を掘る。この往復が、施策の精度を上げていきます。「定量で傾向を見てからデプスで深掘り」が基本の流れですが、逆に「デプスで仮説を作ってから定量で検証」という順番もあります。どちらが先かは目的次第の場合が多いです。

向かないケース

一方、デプスインタビューが向かない場面もあります。「市場全体の傾向を数字で把握したい」「統計的に有意な差を出したい」といった目的には、アンケートや定量調査のほうが適しています。デプスインタビューはあくまで「少数を深く」聞く手法なので、「広く薄く」知りたいときには合いません。

質問設計の実際

デプスインタビューの質は、当日の対話力だけで決まるわけではありません。事前の質問設計で8割が決まるといっても言いすぎではないです。

デプスインタビューの進め方 ≒ 半構造化インタビュー

デプスインタビューの多くは「半構造化インタビュー」の形式で行われます。事前に質問項目を用意しつつ、相手の回答に応じて深掘りの方向を変えていくやり方です。

アンケートを口頭で読み上げるような「構造化インタビュー」とも違いますし、テーマだけ決めて自由に話す「非構造化インタビュー」とも違います。「聞きたいことの軸は持ちつつ、相手の言葉に反応して掘っていく」。これがデプスインタビューの基本的な進め方です。

半構造化インタビューの設計方法については、こちらの記事で詳しくまとめています。

ゴールから逆算して質問を組み立てる

よくある失敗は「ユーザーの声を聞きたい」という漠然としたゴールのまま質問を作り始めてしまうパターンです。聞きたいことが曖昧だと、質問も曖昧になり、当日の深掘りも方向が定まりません。

たとえば解約率の改善が目的なら、「継続ユーザーと解約ユーザーの行動・文脈の違いを特定する」のようにゴールを具体化します。ゴールが具体的になれば、聞くべき質問も自然に絞り込めます。

質問の順序設計

インタビューガイドの質問は、以下の流れで組み立てるのが基本です。

ウォームアップ(5〜10分)

いきなり本題に入らず、まずは相手に話すリズムを作ってもらいます。サービスの話はまだしません。答えに正解も不正解もない、簡単な一問一答から始めます。

コア質問(30〜40分)

ゴールに直結する質問群です。ここが最も重要で、質問は5〜7個に絞ります。それぞれに「こっち方向に深掘りするかもしれない」というメモを添えておくと、当日慌てずに済みます。

クロージング(5〜10分)

「他に何か気になっていることはありますか」で想定外の声を拾います。インタビュー中に聞きそびれたことがあれば、ここで回収します。意外とこのクロージングで一番大事な話が出てくることもあります。

4W1Hで行動の文脈を引き出す

深掘りしたいとき、つい「なぜそうしたんですか?」と聞きたくなりますよね。でも「なぜ」と直接聞かれると、人は後付けの理屈を答えてしまう傾向にあると思います。すると、事業者サイドで知りたかった本当の動機ではなく、「それっぽい説明」によって事業者の判断や示唆が濁ってしまいます。

私たちが実務で使っているのは、4W1Hで行動の文脈を先に引き出すアプローチです。

  • When:「それをやったのはいつ頃ですか」
  • Where:「そのとき何をしていましたか」「どこにいましたか」
  • What:「具体的にどんなことをしましたか」
  • Who:「誰かに相談しましたか」
  • How:「どうやってそれを見つけましたか」

行動の文脈が見えてくると、「なぜ」は聞かなくても浮かび上がってきます。たとえば「そのアプリをどうやって見つけましたか?」→「同僚が使ってるのを見て」→「何を見て気になりましたか?」→「画面がシンプルだったので」。この流れの中に「選んだ理由」が自然に含まれていますよね。「なぜ」を直接聞くのは最終手段くらいの感覚でいるのがちょうどいいと思います。

質問項目テンプレート:サブスクサービスの解約理由調査の場合

実際にどんな質問を用意するのか、サブスクサービスの解約理由を掘り下げるケースを例に挙げてみます。

ウォームアップ

  • お住まいはどちらですか
  • お仕事は普段どんなことをされていますか
  • 「趣味は何ですか」って聞かれたら、どんなふうに答えることが多いですか

コア質問

  • このサービスはどのくらいの期間使っていましたか
  • どんな場面で使うことが多かったですか
  • 使い始めたきっかけを教えてください(When / How で深掘り)
  • 最初に「これいいな」と感じたのはどんなときでしたか
  • 使っていく中で、気になったことや困ったことはありましたか
  • 解約を考え始めたのはいつ頃でしたか。そのとき何が起きていましたか
  • 最終的に解約を決めたとき、他に検討したサービスはありましたか

クロージング

  • もし1つだけ変わっていたら続けていたかもしれない、ということはありますか
  • 他に何か伝えておきたいことはありますか

質問項目を細かく作りすぎないのがコツです。ガイドは「台本」ではなく「地図」です。目的地とチェックポイントは決まっているけれど、途中で面白い路地を見つけたら寄り道してもいい。ただし時間内に目的地には着く。そんな感覚で使ってみてください。

当日の進め方

対面かオンラインか

デプスインタビューは対面でもオンラインでも実施できます。対面のほうが表情や空気感を読みやすいのは確かですが、オンラインでも十分に深い話は引き出せます。

選び方の目安としては、対象者の負担を減らしたいならオンライン、実際にプロダクトを触ってもらいながら話を聞きたいなら対面、くらいのシンプルな判断でいいと思います。

録音・記録の方法

インタビュー中はメモを取りつつ、必ず録音しておきます。メモだけだとどうしてもインタビュアーの解釈が混ざります。後から発話を正確に振り返るために、録音は必須です。

録音の前には相手に必ず同意を取ります。「分析のために録音させていただいてもいいですか。社外に出すことはありません」くらいの伝え方で大丈夫です。ほとんどの方は快く応じてくれます。

オンラインの場合はGoogleMeet等の録画機能がそのまま使えますし、対面でもスマホの録音アプリで十分です。最近は録音データをAIで文字起こしするツールも充実してきたので、書き起こしの負担もかなり下がっています。

ラポール形成のコツ

デプスインタビューでは、相手が「この人には正直に話していいな」と感じてくれるかどうかで、得られる情報の質がまったく変わります。この信頼関係を「ラポール」と呼びます。

ウォームアップの時間はまさにラポール形成のためにあります。加えて、インタビュー中は以下を意識するとうまくいきやすいです。

相手の言葉をそのまま受け止める

「それはこういうことですよね」と自分の言葉で言い換えたくなりますが、まずは「なるほど、〇〇だったんですね」と相手の言葉をそのまま返します。

沈黙を怖がらない

相手が黙ったとき、つい次の質問を出したくなります。でも5秒くらいの沈黙は、相手が考えを整理している時間です。少し待つだけで、より深い回答が返ってくることがあります。

メモを取りすぎない

ずっと下を向いてメモを取っていると、相手は「ちゃんと聞いてくれているのかな」と不安になります。要点だけメモして、目を合わせて聞く時間を長くするほうが、話は引き出しやすくなります。

こうしたインタビュー中の細かいテクニックは、こちらの記事でまとめています。

よくある失敗パターン

仮説の確認作業になってしまう

これが一番多い失敗です。質問の軸があるからこそ、「こう答えてくれるはず」という期待が生まれやすく、期待通りの回答に安心して深掘りをやめてしまいます。仮説と違う答えが返ってきたときこそ掘りどころです。「仮説を検証する質問」だけでなく「仮説を壊しにいく質問」もガイドに入れておくと、この罠にはまりにくくなります。

質問の先回りをしてしまう

「こういうことですか?つまりAだからBということですよね?」と、相手が答える前に解釈を提示してしまうパターンです。相手は「そうですね」と合わせてくれますが、それは本音ではなく同調です。

すべてを深掘りしようとする

全部の回答に「もう少し詳しく」と聞いていると時間が足りなくなります。深掘りするのはゴールに関連する回答だけです。「地図」に戻って、今聞いている話が目的地に向かっているかを常に確認しながら進めます。

分析から施策に繋げるまで

インタビューをやって「いい話聞けたね」で終わるのが、一番もったいないパターンです。デプスインタビューで得た情報を具体的なアクションに繋げるまでが分析です。

発話をそのまま残す

まずは録音データをテキストに起こします。このとき大事なのは、相手の発話をそのまま残すことです。「要するにこういうことだな」と自分の解釈を混ぜてしまうと、後から見返したときに「これはユーザーが言ったのか、自分の解釈なのか」が分からなくなります。

文字起こしの段階では、解釈は入れずにファクトだけを並べてください。最近はAIの文字起こしツールでかなり精度よくテキスト化できるので、ここに時間をかけすぎる必要はありません。

リサーチクエスチョンに立ち戻る

分析の最初にやることは、ラベリングでもグルーピングでもなく、質問設計のときに立てたゴールに立ち戻ることです。

たとえばゴールが「継続ユーザーと解約ユーザーの行動・文脈の違いを特定する」だったなら、すべてのインタビューデータをその問いに対して見ていきます。「この人の発話は、リサーチクエスチョンに対して何を示しているか」。この角度がないと、面白い発話を集めただけで終わってしまいます。

ラベリング → グルーピング → パターン発見

リサーチクエスチョンを軸に据えたうえで、インタビューデータの中から意味のあるまとまりを切り出して短いラベル(見出し)をつけていきます。

たとえば「朝の通勤電車の中で使うことが多かった」には「利用シーン:通勤中」、「他のアプリも試したけど操作が面倒で戻ってきた」には「継続理由:操作のシンプルさ」のようなラベルです。

複数人のインタビューを同じようにラベリングしていくと、似たラベルが集まってきます。これをグルーピングしてパターンを見つけます。

ここで大事なのは、仮説通りのパターンだけでなく、仮説と食い違うパターンにも目を向けることです。「解約理由は価格だと思っていたが、実際には操作の煩雑さへの不満が多かった」——こうしたギャップこそがインサイトの種になります。リサーチクエスチョンに対して「想定と何が違ったか」を見つけにいく姿勢が、分析の質を決めます。

「示唆」で止めず「施策」まで落とす

分析の最終ゴールは「示唆」ではなく「施策」です。

「ユーザーは操作のシンプルさを重視している」で止まると、結局「いい話聞けたね」と大差ありません。ここから「新機能追加時は操作ステップ数を現状以下に抑える」のように、チームが明日から動ける粒度まで落とします。

「で、何をするのか」「誰がどう動くのか」まで言葉にすることが、インタビューを事業成果に繋げるために一番大事なステップです。インサイトを見つけること自体がゴールではなく、そこから事業にどう活かすかまでが一連の流れです。この考え方についてはこちらの記事でも詳しく書いています。

この「示唆→施策」の接続がうまくいかないと、社内で「インタビューやって何が変わったの?」という空気が生まれてしまいます。そうなる前に押さえておきたいポイントはこちらの記事でまとめています。

費用感と外注の判断基準

デプスインタビューを検討するとき、「自社でやるか、外注するか」は避けて通れない判断です。ここでは費用感の目安と、判断の考え方を整理しておきます。

自社で実施する場合のコスト

自社でやる場合、外部に払う費用はほとんどかかりません。必要なのは主に以下の2つです。

対象者への謝礼

商材にもよりますが相場は1人あたり高くても1〜2万円程度あれば十分な場合が多いです。対象者が専門職の場合はもう少し高くなります。ToCの事業で既存顧客にお願いする場合は、ギフトカードやサービスのクーポンで対応することもあります。

文字起こし

AI文字起こしツールを使えば月額数千円程度で済みます。

つまり、5人にインタビューする場合、謝礼を含めても高くても10〜15万円程度で実施できます。見えにくいコストとして担当者の工数がありますが、それでもリサーチ会社に依頼するより大幅に安く済みます。

外注した場合の費用相場

リサーチ会社にデプスインタビューを依頼する場合、一般的な相場は50万〜80万円程度です。対象者のリクルーティング、インタビューフローの設計、当日の実施、分析レポートの作成まで含んだ金額です。

費用の幅が大きいのは、対象者の人数や属性(一般消費者か専門職か)、分析の深さ、レポートのボリュームによって変わるからです。

どこから外注すべきか

費用の詳しい内訳や、外注先の選び方についてはこちらの記事で掘り下げています。

まとめ

デプスインタビューは、1対1で顧客の行動の裏にある動機や文脈を深掘りする定性調査の手法です。

押さえておきたいポイントをまとめます。

  • デプスインタビューが力を発揮するのは「数字では見えているが、理由が分からない」場面です。定量調査との組み合わせで真価を発揮します
  • 質問設計はゴールから逆算して組み立てます。「なぜ」を直接聞かず、4W1Hで行動の文脈を先に引き出すと、本当の動機が浮かび上がってきます
  • インタビューガイドは「台本」ではなく「地図」です。チェックポイントは押さえつつ、相手の言葉に反応して柔軟に深掘りします
  • 分析はリサーチクエスチョンに立ち戻るところから始めます。示唆で止めず、チームが動ける施策の粒度まで落とすのがゴールです

最初から完璧にやる必要はありません。まずは1人に聞いてみて、振り返りながら次に活かしていくのがおすすめです。

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