目次
相談するこんな方におすすめ
- ユーザーインタビューを自社でやりたいが、進め方がよく分からない
- インタビューガイドを作ったものの、当日ガイド通りに読み上げるだけになってしまう
- インタビューはしたが、得た情報を施策にどう繋げればいいか分からない
この記事を読むと
Before:インタビューガイドを読み上げるだけで深掘りできない。やった後も「いい話聞けたね」で終わる
After:どこまで準備して・当日どう深掘りして・終わった後どう施策に繋げるかが分かる
半構造化インタビューとは
半構造化インタビューは、事前に質問項目を用意しつつ、相手の回答に応じて深掘りの質問を追加していくインタビュー形式です。
インタビューの形式は大きく3つに分かれます。
形式 | 質問の自由度 | 特徴 |
|---|---|---|
構造化インタビュー | 低い | 決められた質問を順番通りに聞く。比較・集計しやすいが、想定外の発見が生まれにくい |
半構造化インタビュー | 中程度 | 質問項目はあるが、回答に応じて深掘りできる。仮説検証と探索を両立できる |
非構造化インタビュー | 高い | テーマだけ決めて自由に対話する。発見の幅は広いが、話が散らかりやすい |
ポイントは「ガイドはあるけど、読み上げるだけじゃない」というところです。
構造化インタビューのようにアンケートを口頭で読み上げるのとは違いますし、非構造化インタビューのように行き当たりばったりで話を聞くのとも違います。「聞きたいことの軸は持ちつつ、相手の言葉に反応して掘っていく」。これが半構造化インタビューの基本的な考え方です。
UXリサーチやプロダクト改善のためのユーザーインタビューでは、この半構造化インタビューが最もよく使われています。ユーザーインタビュー全体の進め方についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
なぜ事業会社のUXリサーチでは半構造化インタビューが基本になるのか
事業会社でユーザーインタビューをやるとき、多くの場合「すでにある仮説を検証したい」と「まだ気づいていない課題を見つけたい」の両方をやりたいはずです。
構造化インタビューだけだと、想定していた質問への回答は得られますが、想定外の発見が生まれにくくなります。「満足度は5段階でいくつですか」と聞いて「4です」と返ってきても、その4の裏にある文脈は分かりません。
一方、非構造化インタビューは自由度が高い分、インタビュアーの力量に大きく依存します。話が盛り上がって「いい話聞けた気がする」と思ったのに、後から振り返ると施策に繋がる示唆がほとんど出てこなかった、という経験はないでしょうか。
半構造化インタビューは、この両方のバランスを取れる形式です。事前に「これだけは確認する」という質問軸を持ちつつ、相手の回答次第で深掘りの方向を変えられます。仮説検証と探索を1回のインタビューで同時にやれるのが、事業会社にとって半構造化インタビューが使いやすい理由です。
特に、1人のユーザーに深く入り込むN1インタビューでは、半構造化インタビューとの相性が良いです。質問の軸があるから横比較もできますし、深掘りの余地があるから「その人だけの文脈」にも辿り着けます。N1インタビューの具体的な進め方はN1インタビューとは?やり方から活用まで事業会社の実践視点で解説で詳しくまとめています。
実際、私たちKumonoが事業会社の支援で行うインタビューも、ほぼすべて半構造化インタビューです。ここからは、その設計・進め方・分析方法を具体的に見ていきます。
インタビューガイドの作り方
半構造化インタビューの質は、当日の対話力だけで決まるわけではありません。むしろ、事前のインタビューガイドの設計で8割が決まるといっても過言ではないです。
ゴールから逆算する
まず最初にやることは「このインタビューで何が分かれば、次のアクションに繋げられるか」を明確にすることです。
よくある失敗は「ユーザーの声を聞きたい」という漠然としたゴールのまま質問を作り始めてしまうパターンです。聞きたいことが曖昧だと、質問も曖昧になり、当日の深掘りも方向が定まりません。
たとえば解約率の改善が目的なら、ゴールは「継続ユーザーと解約ユーザーの行動・文脈の違いを特定する」のように具体化します。ゴールが具体的になれば、聞くべき質問も自然に絞り込めます。
質問の順序設計
インタビューガイドの質問は、以下の流れで組み立てるのが基本です。
ウォームアップ(5分):答えやすい事実質問から入る。「このサービスをどのくらい使っていますか」「普段どんな場面で使うことが多いですか」など。
コア質問(20〜30分):ゴールに直結する質問群。ここが最も重要です。質問は5〜7個に絞り、それぞれに深掘りの方向性をメモしておきます。
クロージング(5分):「他に何か気になっていることはありますか」で想定外の声を拾う。インタビュー中に聞きそびれたことがあれば、ここで回収します。
「なぜ」と直接聞かない
ここが半構造化インタビューで最も実務的に大事なポイントかもしれません。
深掘りしたいとき、つい「なぜそうしたんですか?」と聞きたくなりますよね。でも「なぜ」と聞かれると、人は後付けの理屈を答えてしまいやすいんです。本当の動機ではなく「それっぽい説明」が返ってくるんです。
私たちが実務で使っているのは、4W1Hで行動の文脈を先に引き出すアプローチです。
- When:「それをやったのはいつ頃ですか」
- Where:「そのとき何をしていましたか」「どこにいましたか」
- What:「具体的にどんなことをしましたか」
- Who:「誰かに相談しましたか」
- How:「どうやってそれを見つけましたか」
行動の文脈が見えてくると、「なぜ」は聞かなくても浮かび上がってきます。たとえば「そのアプリをどうやって見つけましたか?」→「同僚が使ってるのを見て」→「何を見て気になりましたか?」→「画面がシンプルだったので」。この流れの中に「選んだ理由」が自然に含まれていますよね。
この4W1Hアプローチについてはユーザーインタビューのやり方の記事でも詳しく触れていますが、「なぜ」を直接聞くのは最終手段くらいの感覚でいるのがちょうどいいです。
当日の進め方と深掘りのコツ
ガイドを「台本」ではなく「地図」として使う
インタビューガイドを一生懸命作ると、つい当日もガイド通りに進めたくなります。でも、半構造化インタビューの良さは「相手の言葉に反応して深掘りできる」ところにあります。ガイドを上から順番に読み上げるだけなら、構造化インタビューと変わりません。
ガイドは「台本」ではなく「地図」だと考えてみてください。目的地(ゴール)と通るべきチェックポイント(コア質問)は決まっています。でも、途中で面白い路地を見つけたら寄り道してもいい。ただし、時間内に目的地には着く。そんなイメージで捉えるとうまくいきやすいです。
深掘りすべきサインの見分け方
インタビュー中に「ここは深掘りすべきだ」と判断するのは、慣れないうちは難しいです。目安になるサインをいくつか挙げてみます。
深掘りすべきサインは?
- 回答が短い・曖昧な場合(「まあ、なんとなく」→ 具体的な場面を聞く)
- 言葉と表情にズレがある場合(「満足してます」と言いつつ声に力がない)
- 予想外の回答が返ってきた場合(仮説と違う→ その文脈を掘る)
- 具体的なエピソードが出てきた場合(抽象ではなく実体験は宝の山)
よくある失敗
自分の仮説を確認するだけのインタビューになってしまう。 これは半構造化インタビューで最も多い落とし穴です。質問の軸があるからこそ、「こういう答えが返ってくるはずだ」という期待が生まれやすく、期待通りの回答が返ってくると「やっぱりそうだよね」と安心して深掘りをやめてしまいます。逆に、仮説と違う回答が返ってきても「この人は特殊なケースだな」とスルーしてしまう。結果、インタビューが仮説の補強材料集めになってしまうんです。
これを防ぐには、「仮説を検証する質問」だけでなく「仮説を壊しにいく質問」も意識的にガイドに入れておくことです。詳しくはユーザーインタビューで陥りがちな「仮説補強の罠」から抜け出す2軸思考法で解説しています。
質問の先回りをしてしまう。 「こういうことですか?つまりAだからBということですよね?」と、相手が答える前に自分で解釈を提示してしまうパターンです。相手は「そうですね」と合わせてくれるので、表面上はスムーズに進みますが、相手の本音は聞けていません。
沈黙に耐えられない。 相手が考えている最中に、待ちきれず次の質問を出してしまう。5秒の沈黙は、実際には思考の整理中であることが多いです。少し待ってみるだけで、より深い回答が返ってくることがあります。
すべてを深掘りしようとしてしまう。 全部の回答に「もう少し詳しく」と聞いていると、時間が足りなくなります。深掘りするのは、ゴールに関連する回答だけです。「地図」に戻って、今いる場所が目的地に向かっているか確認しながら進めます。
こうした当日の立ち回りについて、相槌の使い分けやオウム返しの使い方など、すぐに実践できる具体的なテクニックは3桁のインタビューで学んだ本音を引き出すユーザーインタビュー小技集でまとめています。インタビュー前にさっと目を通しておくだけで、当日の質がかなり変わるはずです。
インタビュー後の分析〜示唆から施策に繋げる〜
インタビューをやって「いい話聞けたね」で終わるのが、一番もったいないパターンです。半構造化インタビューで得た情報を、具体的なアクションに繋げるまでが分析です。
発話をそのまま残す
まずは録音データをテキストに起こします。このとき大事なのは、相手の発話をそのまま残すこと。「要するにこういうことだな」と自分の解釈を混ぜてしまうと、後から見返したときに「これはユーザーが言ったのか、自分の解釈なのか」が分からなくなります。
文字起こしの段階では、解釈は入れずにファクトだけを並べてください。
ラベリング → グルーピング → パターン発見
テキストになったインタビューデータの中から、意味のあるまとまりを切り出してラベル(短い見出し)をつけていきます。
たとえば「朝の通勤電車の中で使うことが多い」という発話には「利用シーン:通勤中」、「他のアプリも試したけど操作が面倒で戻ってきた」には「継続理由:操作のシンプルさ」のようなラベルです。
複数人のインタビューを同じようにラベリングしていくと、似たラベルが集まってきます。これをグルーピングして、パターンを見つけます。
「継続しているユーザーの多くが『操作のシンプルさ』に言及している」「解約したユーザーは『やりたいことに辿り着くまでのステップ数』に不満を持っていた」——こうしたパターンが見えてくると、次に何をすべきかが具体的になります。
「で、何をするのか」まで落とす
分析の最終ゴールは「示唆」ではなく「施策」です。
「ユーザーは操作のシンプルさを重視している(示唆)」で止まると、結局「いい話聞けたね」と大差ありません。ここから「新機能追加時は操作ステップ数を現状以下に抑える(施策)」のように、チームが動ける粒度まで落とします。
たとえば、私たちが登山アプリの新サービス開発を支援した際にも、半構造化インタビューで行動の文脈を深掘りしたことで、チームが持っていた仮説とは異なるユーザーの本当の期待が見えてきました。そこから施策の方向性を転換し、ユーザーに響く価値を言語化できた事例があります。支援の詳細はヤマップ様の事例インタビューで紹介しています。
示唆を施策に繋げるには、「で、明日から何をするのか」「誰がどう動くのか」まで言葉にすることが欠かせません。
インサイトを見つけること自体がゴールではなく、そこから事業にどう活かすかまでが一連の流れです。この考え方については顧客インサイトとは?潜在ニーズとの違い・見つけ方・活用事例を完全解説でも詳しく書いています。
この「示唆→施策」の接続こそが、インタビューを事業成果に繋げるための最も重要なステップですし、ここがうまくいかないとなぜインタビューが社内でモヤモヤされるのかという問題にも繋がってきます。
まとめ
半構造化インタビューは、「聞きたいことの軸を持ちつつ、相手の言葉に反応して深掘りする」インタビュー形式です。
押さえておきたいポイントをまとめます。
- インタビューガイドは「台本」ではなく「地図」です。読み上げるのではなく、ゴールに向かう道しるべとして使います
- 「なぜ」と直接聞かず、4W1Hで行動の文脈を先に引き出します。本当の動機は文脈の中に浮かび上がってきます
- 深掘りすべきサインを見分けて、全部ではなくゴールに関連する回答だけを掘ります
- 分析は「いい話聞けたね」で終わらせず、示唆→施策まで落とします
最初から完璧にやる必要はありません。まずは1人に聞いてみてください。そこから振り返って次に活かしていくのがおすすめです。
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